天羽(あまは)律音(りつと)くんが好き。愛しているといっても過言ではない。
 クールすぎて無表情なところも、友達付き合いが苦手で一人でいるところも、真夏でもシャツの第一ボタンを外さない真面目さも、四角張った几帳面な字も、絵が上手なのも、重い前髪も、野暮ったい黒縁眼鏡も、なにもかもが私の心をくすぐる。


 秘めた想いを爆発させたきっかけは、高校二年生の修学旅行で同じグループになったこと。
 グループラインで、律音(りつと)くんと連絡がとれるようになったのだ。
 修学旅行が終わり、グループラインは解散になった。けれど私は想いを抑えることができずに、律音くんに朝の挨拶を送る。

『おはよう。今日は寒いね。風邪を引かないよう、気をつけて』
『おはよう。今日はテストだね。頑張ろうね!』
『おはよう。今日は雨予報だよ。傘を忘れずにね』

 返信は一度もないけれど、既読がつく。それが嬉しくて、私は毎朝のメッセージに勤しんだ。
 けれどそれだけじゃ足りなくなって、夜も送るようになった。

『おやすみなさい。今日もお疲れさま』
『おやすみなさい。今日は寒いね。風邪引かないように気をつけてね』
『おやすみなさい。明日の試験も頑張ろうね』