【収録後】

 ハネちゃんを緊急入院させた次の日、アフレコ現場でマイクに入り損ねた。実際には水戸くんと俺が二人で三本あるうちの一本のマイクでうまくかけ合っていくはずだった。でも、台本の文字を追うことも、画面のラフ画や秒数を見ることも、何もかも普段のように演技することも出来なくて、ついに監督に呼び出された。他の出演者の声優たちは思わぬ休憩を取らされ、みんな時間を気にしていた。
「このキャラの名言になる台詞なんだからさ、もっと思い切ってやってよ!千代は声優界の鬼才なんて言われてるんだからさ、自信もって!」
「あ、その、すみません」