予想外の返答に少しだけ戸惑う‥‥


筒井さんにも分からないことが
あるんだと思うとほんの少しの
安堵感が沸いてしまった


完璧だと思ってる人ならなんでも
分かると思ってたのは案外間違い
なのかもしれないな‥‥


『このチョコレート一つでも、
 原料を作る会社、パッケージや
 印刷会社、デザイン会社の様々な
 働く人がいて出来上がってるだろ?
 その中の一つを選んで働くことを
 選んだならあとはそこで自分が
 やれることを学んで活かせれば
 俺はいいと思う。』


膝の上に置いたチョコレートの箱を
さすると、当たり前に食べているものでも、数えきれない企業があって
一つのものが出来上がっているんだと
改めて感じた。


言われるまで気づかなかったけど、
ハッキリと分かるのは
色々なジャンルの中からここを
選んだのは自分だってことだ。



「私は自社のチョコレートが
 小さい時から好きという単純な
 理由で選んでしまったのですが、
 楽しいですし、厳しくも優しい
 先輩方が多いのでここに入社できて
 良かったと思ってます。
 もし今後本当にやりたいことが
 また出た時はその‥相談にのって
 くれますか?」


筒井さんに選んでもらった
スタートになってしまったけど、
いつか私も筒井さんのように
何かを選択する日が来るかもしれない


今は漠然としたものもないから、
目の前の受付という仕事をミスなく
こなすことが最大の目標にはしてるけど


『お前の人生は一度きりだ。
 誰とどう過ごすのか、どう生きるのか
 は最終的には自分で決めるべきだ。
 迷った時はいつでも言えばいい。
 その為にお前のそばにいるから。』


筒井さん‥‥


隣に座る筒井さんを見上げると、
優しく笑い私の肩を抱き寄せてくれた



『こんな話ができる日が
 来るとはな。大丈夫‥‥ちゃんと
 成長してるから。』


「ありがとうございます‥‥。
 私が成長したとしたら、筒井さんが
 いてくれたからですよ。
 ‥‥チョコもう一つ食べますか?」


ドキン


筒井さんの指が私の顎を捉えると、
上を向かされそのまま唇が塞がれた


何度もゆっくり啄むキスに、
体の力が抜けていき、首の後ろに
回された手にそれがどんどん深くなると
たまらずに筒井さんの襟元を握りしめた


「ンッ‥‥チュ」


2人の唇が重ねられている間に脳内に
響くリップ音に体が熱くなった


『フッ‥‥。
 そんな顔してもっとしたくなった?』