次の瞬間には────…、流れ作業のごとくしなかやかに、彼女の腕がカーフェイさんの首裏にまわりこみ。

 手馴れたように自分のもとまで屈ませると、その唇がごく自然的に彼の唇に重なったのだ。




 「………………………ぇ、」



 拒むでもなく、応じるでもなく。

 ほんとに単なる挨拶みたく2、3秒ほど密着させてからすぐ、満足したのか。


 伊周(これちか)さんは、その丹唇(たんしん)を余韻もなくスッ、────と離したのである。




 ・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・ぇ。




 (ぁ…………………………レ、……)




 これに。

 どう、反応しろと。



 ────…そんな、言い草に事を欠いた頭ではもはや、スリープ状態。

 脳もからだも機能せず、目先の光景にただ、唖然とは…する。



 ぎゅ、と無意識のうちに握った拳。

 同じくしてイヤな鼓動が、胸の内側をドクドクと激しく、叩く音が体感越しに理解できる。




 "ソレ"、は、あまりに一瞬の光景で、フィルターのようなモノがかかった出来事で。

 たった数秒の間なのに、TV画面をとおして観ているような錯覚を覚えるくらいの、




 「………………〜ッハァ、」




 ・・・・・・・・・嗚呼、

 やっぱり、だめだ。