彼女の行く先々には、必ずそのひとが傍に支えているらしい。 昨晩にも相対(あいたい)した、黒スーツの、壮年ぐらいであろう男性はたぶん 船岡さんの、側近のようなひとで。 その彼によって開かれた荘厳な、西洋式の扉の奥を泰然(たいぜん)とした形(なり)で 入っていく、彼女の後ろ姿。 後ろ姿を見つめながら、同時に盛大な全体像を捉えた、────あまりに 私には縁も、ゆかりもない 建造物に。 ・・・・・・・・、絶句。 咄嗟に、 ・・・・・不動。