・・・・・・不覚。




 そんなことを悶々と、こころに含有(がんゆう)したままバスを降車して。

 大手のショッピングモールより、奥ばった向こう側にある百貨店のほうへと、赴くべく。


 気持ちとは裏腹に、足を
 のらりくらり、すすめて行く。



 交差点を渡り、駐車場側の『P』と表示された裏手にまわれば向かいには
 それなりに、高値のつくような高層マンションが何棟も(そび)え立っていて。




 (……ぁ、あそこか)



 ちょうど、マンションと百貨店の駐車場入り口の中間部にある公道に、
 高級車4台が(────違反しているにも
 かかわらず、)堂々と路上駐車されているのを見つけたのには。


 さすがに瞠目(どうもく)し、

 私は駆け足でそちらに向かった。




 周囲に人気が、そんなにあり触れていないのがせめてもの救いだ。


 人気がないと言っても、隣接した立地には有名なエスカレーター式大学や総合病院だって併設されていて。

 その公道を道なりに乗ると国道にもつながるし、小さなパン屋や薬局、
 すこし歩けば24時間営業のコンビニもあったりと。



 立地条件に関して言えばかなり、好条件ばかりが揃った土地柄とも言えるのだろうが、




 (………高いん、だろうな、)




 ごく『フツー』として生活を営んできた私には、肩身の狭い輝かしさだ。

 到底、
 あり付けられる代物でもあるまいし。



 ・・・・・・なんて。



 その景色を尻目に、ぼんやり流していきながら、しかし心中では

 いとも簡単に感情を擽る、羨望や沸きたつじゃっかんの(そね)みを誤魔化すみたいにもみ消して。


 早足で目的でもある高級車のもとまで近寄ると、

 長々と待ち伏せていたであろう彼女に
 頭を下げた。