・・・・・・、今さら。


 バスにも乗っているというのに、逃げられないとわかっていても

 つい視線は、
 逃げ腰になってしまう。



 そして。


 そんな時ほど彷徨う視線の行き着くさきは、目を合わせたくない
 人物と。

 交錯(こうさく)するのが、



 ────非常な現実の、

 倫理。




 彼女の目線が、ターゲットを定めるように
 こちらに向いている。

 サングラス越しなのに、
 車窓越しでもあるはずなのに、・・・・・・。




 「……────ッはぁぁ、っ」



 閉ざした口から、息をか細く吐き出す。


 逡巡しても意味をなさず。

 こころの不完全燃焼だって四散してはくれない。



 だけども渋々、鞄のポケットに手を突っこむと重たい空気を携えたまま。

 私は不本意ながらスマホを
 とりだし、ロック画面を解除した────…。




 『────百貨店の駐車場入り口のほうへ回ってください。バスを降りたら
 そちらに
 向かいます』