関係性の明確な名称もない私が、彼女に対して羨望をいだくだなんて僭上(せんじょう)沙汰(さた)、…とんだ赤っ恥もいいとこ。



 (かじか)んできた赤い指先たちを、擦りあわせながら暖をとるも

 自分のこころの狭さが(しゃく)に障るばかりでなんの、解決にもならない。




 ・・・・・いっそのこと、最初(はな)っから剛腹(ごうふく)な性格だったら、
 こんな事ほどで動揺を煽られるのもなかったのだろうに。




 ────…なんて独白を、脳裏で漫然(まんぜん)と流しつつ

 ふたたび、視界にとり入れた目先のふたりの動向は、どうやらようやく、互いにその腕の力を緩め。



 彼女が興奮冷めやらぬ感じにカーフェイさんを見詰めあげると、確認するように、彼の頬に親しげに触れている様子がうかがい知れた。




 「────ぁ、…ぁ……ぅ。────はさつ……とおも…────」


 「────あぁ、…かく……だから────た。…だろ?」




 ・・・・・なに、話してるん、だろ。

 この距離からじゃ、わかんない、・・・・・な。



 当然か。

 盗み見してる時点でおかしい、もの。




 もう────…帰るべき、だよ。




 必死にそんな理性を頭にくりかえし、平静であることに努めようと

 ひとつ、先の光景をなんとか、飲み下すように受け流そうとしていれば。



 いまだ麗しく。

 歓喜の表情でカーフェイさんを見詰めあげていた彼女が、クスッと艶美な微笑を口許につくると、




 ────…一瞬、

 そう、"ソレ"はほんの一瞬の間の出来事だった。