矛盾した感覚とわかっていても、そう、感受せざるを得ないのが、人間の厄介な感情。




 煩いごとを、早く解きたくて。

 早足に辿り着かなくては…、と急くのに。


 逃げたい感情と弱さのせいで足が、いつになく(もつ)れ、鉛を背負っているかのごとく道は、・・・・どこまでも長いんだ。



 震える自分の吐息を感じながら深呼吸を、浅くくりかえし
 こころを着地させて。


 からだの内っ(かわ)でころげ回る魔物を撫で回すみたいに、飼い慣らすのに

 飼い慣らされたのは
 実は自分なんじゃないか。とおもうほど、焦りが消え失せてくれるワケでもない。



 ……結局、物理的に目をぎゅっと瞑ることで思考を閉ざし。


 差してくる陽の明るさすら跳ねのけて顔を背けた私は、グッと眉を(ひそ)め。

 バスが来るまでの時間を、やり過ごすしかなかった────…。