そしてそんな彼の、明確な感情はわからないまでも捉えたのは、その薄い唇の角が
 妖艶に上がっているという事実。



 カーフェイさんは、あまり喜怒哀楽を得意としない、…のだとおもっていた。

 比較的ものしずかで品に溢れて、多少の『怒』や『哀』はわかる
 (────表面的かもしれない)のだけれど感情を(おもて)に出している姿は、実はそんなに見たこともなくて。




 (………だ、から、…あんな、自然、……に仕方なさげみたいな、顔…、)



 ・・・・・知ら、ない。



 彼女が、高まりのままに歓喜してカーフェイさんに抱きついた様は、愛しい恋人にする"ソレ"と、類義のような。


 そのうえでそんな彼女をうけとめ『愛しい』とばかりに、口許に弧を描いたカーフェイさんがしっかり、その手をほそい背に回して。




 ・・・・・・・、




 「………………っっはぁ…ッ」




 ────…吹きつける冷気が、つめたい。

 はやく、帰らなきゃ、踵をかえして。



 そう、────理性ではわかっているのにからだが梃子(てこ)でも動かない。

 動け、ない。



 なんでだろう、この失望感。

 付き合ってるワケじゃな、いんだよ?私は特別でもなんでも、無い。




 彼の、────…"彼ら"の、



 そこまで考えて、そう言えばアーウェイさんがいな、い?

 彼はいつも、確か側近としてカーフェイさんの傍にいるのに。




 ・・・・・・・って、何、
 を安堵して、るの?

 私、いつから・・・
 ・・こんな傲慢になった?