「────あ゛?」



 ────…その光景を。

 どこか懐かしくエントロピーに。



 …しかし特別におもい(ふけ)ることもなく一瞥(いちべつ)を車窓外に移したカーフェイがふ、と。

 出し尽くすものもなく無意味に、
 息をついていた折────…。



 それまで小気味よく刻んでいたタイピング音がぴた、と鳴りを潜め。



 訝しげな"義弟"の疑念が車内に、異様さをまとって響いたのでそとの世界に向けていた闇色の双眼を。


 サングラス越しに眼前に座る彼に向けながら、カーフェイは
 言葉の先を促した。




 「オイ。あいつ今ごろ電車に乗り込んでやがんぞ。さっきホテルを出たんじゃねぇーのか」


 「…寄るところでもあったんだろ」

 「寄るとこってどこだよ」

 「俺が知るか」


 「〜ったく。
 どこで道草食ってンだあの気まぐれオンナは」




 ぶつぶつ、いつものような悪口雑言(あっこうぞうごん)を、羽のような軽さでぼやきだすアーウェイ。


 しかりしその銀色の瞳は自身の、胡座のうえにあるPCに注視させ、

 相も変わらずとある少女の動向をGPSで追っているという現状。



 それに適当で、適度に応戦を加えていたカーフェイだったが。

 突如べつの声がふたりに向けて、
 介入する。




 「、あの────総代表。申し上げても、宜しいでしょうか?」


 「…なんだ」