口端に、きもち程度に咥えられた煙草の先からは、紫煙が視界をおおうように(くゆ)りだし。


 それを(すが)めた眸で、にらみつけながらカーフェイは、コートの内側からスマートフォンをとりだすと指で、操作する。




 …どうやらまだ、
 仕事は終幕していないようだ。



 眉間にしわを刻み、心底、面倒そうに用を足しながら彼は、ふたたび。

 "血のわけた兄弟"にむかって声を響かせた。




 「…それより。GPSは何処になってる」


 「─────ンあぁ?あーー・・・・、
 今日は自宅に置いてきてっぞ」

 「監視カメラは」


 「─────ハァーー、
 ・・・・チッ。ちょっと待ってろ」

 「ンッ、…あぁっ」



 おい。

 ところ構わず睦み合うのは結構だが、仕事はちゃんとしてくれや。




 片眉を吊り上げながら"義理の弟"のその雑駁(ざっぱく)ぶりに呆れ、つい、そんな雑念でふ、と息を吐いてしまった。


 密に絡みあっていた彼女の、浮き足立つような甘ったるい声を、アーウェイは意外にもすんなり。

 突き放し、乱れのないスーツ着でいつものようにPCを開いていく。




 ・・・・・抜かりはたしかに無いが。




 ときに
 厄介なものを引きこんでくる
 のも彼である事を忘れてはならない。

 わざわざ婉曲に、
 ことをややこしくさせるのがこいつの
 やり方なのだ。