神の手によって造作された人外、とも言える美丈夫を、満足意気に自身の腕のなかに
 ひき寄せ。


 爪先を立ち上げて
 長身のカーフェイと対峙したその女性は、
 親しげに。

 彼の頬に触れると嬉々の声音(トーン)で表情もゆるめて、
 話しかけたのである。



 「よかったぁ来てくれないんじゃないかって心配したぁ、もぅーー」と。愛らしく。

 柔らかな白味いろの頬をぷくっ、と
 膨らませて。




 「カーフェイは撮影現場の仕事のときだって付き添ってもくれないんだから。
 今夜のあたしの誕生パーティーも
 出席しないんじゃないかとおもって」


 「…あぁ、気が乗ったらな」

 「いっつもソレ。気なんて乗るつもりもないんでしょ」

 「仕事も詰まってる」

 「嘘つき」


 「…はぁ。────だから今日くらいはわざわざ、せっかくだから予定を空けてやったんだろうが。あまり
 せっついてくれるな。気分がワルイ」

 「ん、わかってる」



 ────…次の瞬間にはしっとり、彼女の唇がカーフェイの唇に重なり、密着。


 まるで
 これから吐き出されるであろう小言を、未然に防ぐためのモノのような。

 しかし、すぐに離された"ソレ"のあとに
 しっかりとカーフェイは毒を吐いた。




 「…あれだけ着信と留守電を入れられりゃダレだって迷惑に決まってんだろ」

 「だって、っ、カーフェイ最近、全然LINEみてくれない。メールも、」


 「────…、用事がある」




 ────…不意に、その(ネイビー)色の双眸が、彼女の真後ろへと傾き、
 (すが)められ。

 認めた気がした"姿"を追うように、
 ホテルのほうに視線をやったけれども望んだ"姿"は
 得られず。


 左右対称に、完璧に配置された柳眉がやや、もちあがると
 不快さをあらわにする。


 「ねぇ、…カーフェイ?」────そう、自分を呼びかけてくる
 (どうやら耳障りらしい)オンナの声を無視(スルー)した彼は、

 すぐさま、
 彼女を引っぺがした。