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 ────…「カーフェイッ」




 ────…数時刻前。



 寒々しく。

 冬の大気が外気温を凍結させていくなか、某ホテルまえの道路際で密着するのは、ふたつの影。



 数台の外車や、黒服のSPらしき男性たちに囲われても尚、
 気にする様子もなく
 その女性は、大胆にもカーフェイの首に
 腕を回していた。




 すこし柑子(こうじ)色のまじった、しとやかな長髪は寒気といっしょに、優美に靡き。

 そして
 己に抱きついてきた女性を、彼は難なく受け止めている状態である。


 常通りウエストに、それこそ慣れたような所作で腕をまわし細い肢体を、
 "あくまで"支える。



 はたから見れば、恋人同士の逢瀬のようだが。

 誰ひとりとして邪魔することのかなわない、そんな空間がまるで、
 ドラマのごとく出来上がっていた。