「…そうね、貴女の知り合いではないわ。でも…、」────…そう、前置きをした彼女は。


 ゆるやかに波をもたせたブロンドの横髪を、
 耳裏にかけなおしながら気の強そうな眉尻を、さらに、吊り上げ。



 「言ったでしょう?()の方々と関係を持っているのなら話しは別。と。貴女も、

 …裏社会(コチラ)の世界を
 知っておいたほうが宜しいんじゃなくって?」


 「………ぇ、」

 「身の程を知れる、いい機会じゃない。ちゃんと彼の方々との今後の付き合い方を、改めるべきなんじゃないかしら」




 ・・・・・・嗚呼、知ってる、

 この感覚。


 アレ、だ・・・・・・。



 他人を貶めて、自分たちが優位に立とうと見せつける、言い分で、相手の戦意を(くじ)く。

 その根底にあるのは、
 ────…オンナの、嫉妬、侘しさ、孤独。




 ・・・・・・・だけど。

 私に、言い返すだけの器量も根拠もない、



 だって私とあの人たちとは、ただの、お昼ご飯の時間を共有する、

 ためだけの関係。


 何にも無い。

 ほんとうに、なんにも無いし、なにも知らない、・・・・・単なる、




 (…………………単なる、?)




 『単なる』ですら値しない。


 なにも、無い。

 何も無いじゃん。



 じゃあ私は、

 なにを、そこまで頑なであれば良いの────…?