「……あの、…すみ、ませ…っん、申し訳ありません。その、………
 …あ、あの方々、に…非礼な態度で接してしまっていて」




 いけない・・・・・。




 あまり事態を深刻化させないための修繕だった、今の自分の発言は。

 率直に、ストレートに、変にウソを吐けないのが自分のなかの良点であり、欠点。



 なんとか要領を得た応対を、自分なりに工夫し口にしてみて。

 これ以上の不毛な時間と、誤解を招く状況を長引かせぬべく、無知と取られないよう細心の注意を払って空気を壊す。



 ・・・・・・変に、気取られぬよう、心構えを引き締めて。




 そんな私の姿を見た彼女は、
 どう捉えたのか。


 いずれにしても吐かれたちいさなため息のなかには、

 浮上していた不審さはどうやら、拭われたようだった。




 「『全く知らない』、という訳では無さそうね。ふふ、安心したわ。まさか()の方々がそんな愚かな子を傍に置いているとはおもえないもの」


 「『杞憂』…、でしたか」

 「竹倉(たけくら)の早とちりね」

 「出過ぎた真似を」



 くすくす、と。

 今度は、ころり表情を覆らせた彼女。


 しっとり、微笑んだかとおもえば、一転して挑発的な一笑をつくりあげた目の前の美麗人(びれいびと)は、「単刀直入に言うわね」────…そう、不敵に口許を歪ませた。