「先輩!こないだ婚活アプリで知り合った人と会ったんですよね?どうでした?」

デートの次の日、道場にやってくると、女子更衣室の中で、私がデートしたことが完全にバレていた。

まぁ誰が話したかは検討はついている。

後輩の南だろう。

話しかけてきたのは、7つ下の後輩、中村ふみ。

私が婚活アプリに出会った理さんはとてもとても優しい人だった。しかも男性な顔立ちをしていて、正直言ってアプリよりもイケメンだったと思う。しかも商社で働いていて、経済的にも自立していて、私には非常にもったいない男性だった。

「てか先輩、最近毎日テレビ出てますけど、お相手の方、先輩に気づいてないんすか?」

そうだった。

文ちゃんに言われるまで、私は全く気づかなかったのだ。

私は金メダル獲得後、様々なメディアに出演している。

彼はテレビを見ない人なのだろうか。

私のことには全く気づいていない様子だった。

「うん。気づいてないみたいだった。私が事務の仕事してるって言った時も何も言ってなかった。」

「え?先輩、スポーツ選手なこと隠したんですか?」

文ちゃんは驚いた顔した。

「うん。だって引かれたら嫌じゃん。」

「いつかばれますって。先輩、自分が金メダリストってこと分かってます?」

「分かってるよ。まぁばれなきゃなんとかなるよ。それよりさゆみちゃんの彼氏は、どんな人なの?」

私はこれ以上詰められることを恐れて、話題を変えた。

さゆみちゃんは、この中で最年少の20歳。

最近、私たちのクラブに移籍してきた。

彼女の彼氏は、スポーツ選手で柔道に理解がある人だ。

彼女の話を聞く限り、彼女の彼氏はとても良い人なのだ。

しばらくさゆみちゃんの彼氏の話を聞いていた私たちだったが、再び私の恋についての話題に移ることになったのだ。

「先輩、同業者は嫌なんですか?」

すかさず、さゆみちゃんが尋ねてきた。

「嫌って訳じゃないんだけどね。」

私がそう言うと、気まずい空気になる。

訳を知っているみなみとふみが下を向いたのがわかった。

「じゃあ私練習戻るね。」

私はそう言って、逃げるように更衣室を出た。

私が恋人を出た後、女子更衣室がざわざわしたのを感じた。

私には同業者を避けている理由がある。

高校時代、同じ柔道家と付き合ったことがあった。

その時に同じ柔道家だから、女性に見えないと言う理由で、相手に浮気されてしまい別れたと言う過去があったのだ。

それからは、同業者とは付き合わないと心に決めている。

でも大丈夫だ。

私には理さんがいる。

これからも頑張ろうと、心に誓ったのである。