「監督、どうしたんですか?」

私は、道場の奥の部屋に呼び出されていた。

この部屋に呼び出される事はほとんどない。

私は何かしただろうか。

内心ドキドキしていた。

「これ。」

監督が雑誌を私に差し出してきた。

週刊誌だった。

そこには、「池田選手、2股交際?」

と書かれてあった。

どういうこと?

見に覚えがなさすぎて、私は自分の目を疑った。

「この記事が今度の週刊誌に掲載されるらしい。事実ではないとは、思うが、一応確認だ。」

監督はいつものように静かに言い放った。

週刊誌の中身を読んでみると、おさむさんと思われる男性A、賢斗さんと思われる男性Bと二股交際していたという記事らしい。

理さんと会ったのは小さい2回だし、2回目のデートの後連絡が途絶えていた。

その後後混んで、賢斗さんと会った。

そして、付き合うことになった。

これが事実だが、記事によると、二股交際していたことになるらしい。

「2股交際は、事実じゃないです。おさむさんとは、2回会っただけでその後お会いしてないです。」

私は強く言い返した。

「そ、そうか。わかった。でも池田は、しばらく試合出場停止になるだろう。」

「え?なんでですか?」

恋愛報道だけで、試合まで出場停止になると思ってもいなかった。

厳しすぎる処分だと、正直思ってしまった。

でも、次に監督が言った言葉で私は納得することになる。

「実はな、このおさむって奴が既婚者だったらしい。それでお前は不倫扱いになるんだ。」

「え?…」

時が止まったとは、こういうことを言うのだろう。

私は何も言い出すことができなくなってしまった。

「週刊誌は、明日発売になるらしい。明日以降、この道場にもメディアが殺到すると思うからしばらく練習も来なくていい。もう今日も寮に戻っておくように。」

監督は最後まで表情を1つも変えなかった。

「わ、わかりました。」

私は、一生懸命に言葉を絞り出し、荷物をまとめ、寮へと向かった。