私なんでこんなモヤモヤしてるんだろう。

柔道バカが門限破ったから?

いつも練習ばかりしている真面目な原が急に不真面目になったことの違和感?

友達が急に遊び出すようになって遠くなっちゃった感じがしたのかな?

あああ。もう分かんないよ。

私はトイレに向かう。途中、いろんなことを考えすぎて、頭がパンクにしそうになった。

私はひたすら頭を掻いた。

「あ。」

トイレで見たことがある女性と鉢合わせた。

くるくるに巻かれたカール髪。

華奢な体型。

「あ。めぐみちゃん、なんで。」

めぐみちゃんだった。

学生時代、私をいじめていためぐみちゃん。

彼女は先輩のことが大好きだった。

なぜ恵ちゃんは道場にいるのだろうか?

「今日は、取材で。」

「取材?」

「私、今スポーツ記者やってて。」

「あ!そうだったんだ。」

「そうそう。あの時も加藤先輩の取材してて、そのあとにご飯に行っただけなの。」

そうだったんだ。

彼女はスポーツ記者になっていた。

「…」

「…」

私たちに気まずい空気が流れる。

私たちは決して仲が良いわけではない。

同じ学年だったけれども、彼女は先輩のことが好きで、私は先輩の彼女だった。

そんな私のことをいい風には思っていなかっただろう。

結果、めぐみちゃんには私は嫌がらせを受けていた。

今はどうとも思っていなくても、私たちには話す内容がなかった。

「ゆいちゃん…私ゆいちゃんに言わなきゃいけないことがあるの。」

この沈黙破ったのは、意外にもめぐみちゃんの方だった。

「言わなきゃいけないこと?」

「実は…」

「めぐみ!あ…池田。」

彼女が何かを言い出そうとした瞬間、先輩がやってきた。

この2人はまだ付き合っているのではないか。

なんとなく大人の間でそう感じた私は気を遣って、

「…じゃあ、私は練習に戻りますね。」 

と言った。

「ゆい…」

「ゆいちゃん!」

彼らが私の名前を呼んでいるのは気づいたが、振り返らずに練習へと戻った。