「先輩、聞きました?池田さんに彼氏ができたって。」

次の日、道場に行くと、昨日いなかったジャンボが話しかけてきた。

僕は昨日加藤さんの背中を押した。

加藤さんは池田に思いを伝えたのだ。

2人は結ばれたのだ。

僕は池田が幸せなら何でもいい。

そう思っていた。

それに加藤さんはいい人だ。

僕の長年ずっと見てきたから知っている。

「ああ。加藤さんだろ?」

「なんでここで加藤さんが出てくるんっすか。違いますよ。」

え?

どういうことだ。

加藤さんが池田に告白したんじゃないのか。

僕の脳内は混乱していた。

「なんかこないだの合コンで知り合った斉藤って奴らしいっす。」

斉藤…?

誰だよ、加藤さんはどうなってるんだよ。

僕は、気づくと、彼に問い詰めていた。

「だからなんで加藤さんがそこに出てくるんっすか。」

彼は呆れた表情をしていた。

「それより先輩は、いいんすか?このままで。」

「いいんだよ、俺は。池田が幸せならそれで。」

「本当にいいんですね?このまま池田さんが良くわからない奴と結婚しても。」

「…」

僕は何を言うこともできなくなってしまった。

「よくないじゃないですか。先輩、やっぱりあの作戦、決行しましょ。」

「あの作戦って?」

「いいから。行きますよ?」

彼はまた僕をどこかへ連れて行った。