「え?斉藤さんと付き合った?」

道場に着くと、先輩から衝撃的なことを言われたのだ。

合コンで知り合った斉藤さんと付き合うことになったらしい。

私は先輩と原さんをくっつけようと思っていたのに、知らぬ間に、新しい恋愛が始まっていたのだ。

先輩によると、斉藤さんからこの間の練習終わりに告白されたらしい。

「この間、もう恋愛なんてしないって言ってませんでしたけ?」

「言ってたけど、気分が変わったの。」

「急にそんなに180℃変わることってあります?」

私は、疑心暗鬼になってしまった。

「斉藤さん、言ってくれたの。今の私のすべてが好きって。柔道してても、いいし、大食いでもいいし、男っぽくていいって。それにオリンピックに出るために努力してきたこともかっこいいって。だから私も恋愛から逃げずに向き合おうって。気づいたらはいっていってたの。」

私が思っているよりも、真剣に考えていたことに安堵した。

本音を言うと、原さんと付き合ってほしいと思っていたが、先輩が幸せなら、それでいい。

「先輩、おめでとうございます。」

「ありがとう。」

先輩の表情は、恋する乙女になっていた。

「先輩、幸せになってくださいね。」

「うん。」

こんな幸せ絶頂な先輩にこのあとあんなことが起きるなんてこの時の私は、知る由もなかった。