あああああああああ。

ヤァぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。

道場に、様々な叫び声が聞こえている。

僕は今日も道場に来ていた。

いつも通り練習を続けている。

「おはよ。」

池田が道場にやってきた。

いつもに増して、不機嫌な様子だった。

「どうしたの?」

「どうしたのって?」

彼女は僕をにらみつける。

今日はものすごく不機嫌な日みたいだった。

「早いじゃん。」

僕もめげずに、彼女に話しかける。

「そう?いつもこの時間じゃない?」

彼女のイライラは、ピークに足しているようだった。

「いやそれは、ないだろ。」

僕は、ポツリと呟いた。

「先輩!せんぱい!」

ジャンボが遠くから僕を呼んでいた。

僕は、ジャンボの元へ行く。

「アイツ、どうしたんだよ?なんか前より様子またおかしくなってない?」

「池田さん、昨日どこ行ってたか、知ってます?」

「知らない。」

「合コンですよ。」

「は?」

僕は道場に響き渡るほどの大声を出してしまった。

僕は、ジャンボから昨日の経緯を全部聞いた。

合コンに行った先で、加藤先輩と会ったこと、その隣にめぐみとかいう奴がいたこと。

僕は、一瞬、めぐみが誰なのかわからなかった。

「先輩、覚えてませんか?高校時代に加藤先輩の追っかけしてた女ですよ。」

「あ!キスしてた奴か。」

「キスってなんのことですか?」

「いや、なんでもない。」

めぐみ…

一時期、池田のことをいじめていたやつだ。

そんな奴が加藤先輩の隣にいた。

それは彼女も荒れるだろう。

「やっぱりショックなんすかね?てか池田さんは、まだ加藤さんのことが好きなんすかね?」

「どうなんだろう。」

彼女は、加藤先輩のことを思っているのだろうか。

思っているかわからないが、引きずっているのは確かだ。

16年と言う月が経っているのにと皆が言う。

だが、僕たち、アスリートにとっての16年と言うのは、非常に短いものなのだ。

毎日練習を続け、リンピックと言うものを目指しているうちに、あっという間に4年と言う月日が経ってしまう。

その4年間、恋愛を全くせずに、オリンピックの事だけを考えて生きる期間もある。

そのため、恋愛に時間を割いている暇がないのだ。

そうしているうちに、自分が恋愛せずに過ぎてしまっている年月に驚くのだ。

「先輩も池田さんのこと好きなんすよね?先輩、まぢでそんなウカウカしてると、取られちゃいますよ。」

「取られる?」

「はい。加藤さんかもしれないし、合コン相手かもしれないし、婚活相手かもしれない。敵は多いですよ。」

そう。

これまでの彼女とは違う。

今は、彼女は、恋愛をしようとしている。

相手が婚活アプリで出会ったやつかもしれないし、合コンで出会ったやつかもしれない。

もしくは、加藤先輩かもしれない。

そこに僕が入る余地はあるのだろうか。

「多分一緒にいすぎて、当たり前になりすぎてるんじゃないですか?」

ジャンボが的を得たことを言った。

「そうなのかな?」

「そうですよ。ここは、逆にひいてみるのもアリかもしれないです。」

「ひいてみる?」

「はい。」

僕は彼女の眼中に入るためには、逆にここでひいてみると言うことが大事なのではないか。

僕は次の作戦を実行する。