「……綺麗だな…」
目の前に広がる日光に煌めく水面を見て、私の口から無意識に発せられた言葉。
「…よし……」
ひとつ息を吐き、学校へ続く道を再び歩み始めた。
海風が頬を撫でる。気持ちが良い。6月の下旬、本来ならもっと暖かいはずだけど、海沿いは少し肌寒い。その寒さも心地が良かった。
私の通う海原高校は、この道をまっすぐ進んだところにある。私の家から高校まで、本当はもっと早くつく道があるのだけど、この海を見たいがために少し早めに家を出発し、少々遠回りであるこの道を歩いているのだ。そこまで大きくないこの町には海原高校と石山東高校のふたつしか高校がない。
だから、ほとんどの生徒は自分の家に近い方の高校を選んで受験するのだ。石山東はこの町の東側、海原高校は西側にあるため、街の真ん中でふたつに分かれる。中には隣町に受験をする子もいるけど、交通の便が悪いからなのか、本当にごく少数だ。私も迷わず海原高校を受験することに決めた。
あの時からもう3年近く経とうとしている。私は高校3年生。この道を歩くのも中学からなので6年目だ。
「おはよう!美波!」
「由奈、おはよう〜」
道の途中でいつも合流する由奈。中学からの友だちだ。暑い日差しの中、毎日練習をする彼女の肌は綺麗な小麦色だ。本人は「美波みたいな白い肌が良い!」と言うけど、私は由奈の肌の色が好きだ。弾けるような可愛い笑顔の由奈はまさに太陽のような女の子。海辺と言ってもやはり夏の日中は暑いわけで、そんな中練習をするテニス部を始めとする外部活のみんなは本当にすごいと尊敬する。