次の日の朝、朝食をリヴィオと食堂でとる。新鮮なフルーツにアスパラのソテーが美味しい。ベーコンはカリカリしてるし、香ばしい焼き立てパンはフワッとしていてちぎると白い部分が伸びる。黄色い卵のオムレツにフォークを入れると中からトロリと半熟卵が溶けるように出てきた。
幸せな朝食をゆっくりと味わいながらリヴィオに話す。
「そろそろ護衛はいいわ。急遽頼んで悪かったわね」
えーっ!と小さい声だがメイド達の残念そうな声がする。
「しばらくいる」
キャーと嬉しそうなメイド達。
……な、なに!?この声?楽しそう。
美形男子ではあるけど。態度は残念なところがある。
そう!騎士団も辞めたと言っていたが、トラブルがあったことは間違いない。
「は!?なんで!?……聞きそびれていたわね。王都の騎士団に入ったのになんで辞めたの?」
「うるせー。いろいろあるんだよ」
いろいろがなんなのか説明しなさいよと思ったが話したくないから話さないのだろうから放っておこう。
「えーと、じゃあ、騎士団以外の就職もあるでしょ?『黒猫』なら引く手あまたじゃない。卒業するときもいくつも話があったでしょ」
欲しい人は山ほどいるだろう。こんな片田舎の娘の護衛してる場合ではない。
「護衛はいらないってことか?セイラは学園首席卒業の優秀な生徒だから自分の身は自分で守れるだろうよ」
口調がイライラしている。まずいこといったかな?
首席!?とヒソヒソメイド達が驚きの声をあげている。
私もこのスペック、前世でほしかったです。
テスト勉強要らずよ!本を一度読めば頭に入る能力。記憶力の能力が半端ない。
「居てくれるなら心強いけど、いつまでも引き止めておくのも悪いと思ったのよ」
「気にするな。いらない時がきたら、いらないと言ってくれればいい」
「そ、そう?じゃあ、お言葉に甘えてお願いシマス」
一体、王都の騎士団でなにがあったのよ!?帰りたくないという雰囲気が伝わる。
しかしリヴィオが居てくれるなら、安心だ。バシュレ家がなにか仕掛けてきても心強い。
絶対にバシュレ家は嫌がらせをしてくる。特にソフィアはしつこい。
朝食を終えて建築士のベント=アルーダと面会する。
「はー。なるほどねー。面白いね」
私の話を聞いて砂色の髪をし、メガネをかけた青年はそういう。この屋敷を建てたのは父だそうで、今は隠居してるらしい。後を継いでいるベントが来てくれた。
「しかし、そんなお風呂のスタイル、この辺の人たちに受け入れて貰えるのかなぁ?」
「確かに私もそう思う。だけどそれは目先のことで、考えているのはその先でもなのよ。とりあえずリサーチしたくて、まずはお風呂屋さんからよ」
「何を考えているかは聞かないでおくよ。バシュレ家の爺さんの血を受け継いでる君だしね」
「お祖父様のようにうまくできるかはわからないけどね」
そう前置きして、私が書いた簡単なラクガキ程度のなんちゃって設計図を渡す。
男湯、女湯、くつろげる畳(敷物)スペース、喫茶コーナーがある。
しばらくベントは眺めていたが快諾してくれた。
「オッケー!引き受けたよ。とりあえず作ってみるよ」
「お願いします」
私に深々と頭を下げられると困ったように笑う。
「簡単に頭を下げないでくださいよ。お嬢様は領主様になったのに」
「あ、あれ?そうね……つい」
頭を下げる………そうだ。お辞儀や接客の指導もしなくては!メイドや使用人を少し増やそう。募集しよう。やることいっぱいあるなぁ。
トトとテテが午後に到着した。屋敷の一室、地下室付きの大きい部屋を用意しといた。
「こんな感じの物を冷せる箱が欲しいのよ」
図にして書いて見せる。平置きタイプのアイスクリーム用の冷凍庫、業務用の冷蔵庫。アイスクリームも試食してもらう。
「わかりやすいのだ!」
「アイスクリーム?これは美味しいのだーっ!」
二人はキャッキャ言いながら、すぐに取りかかる。
足りない物や集めてほしい物があれば言ってねと声をかけるが、仕事を始めた二人の集中力はスゴイ。もう無言で工具を持ち、組み立てていく。
「えーと、この箱の術式とか一応考えてみたんだけど、どうかしら?」
トトとテテが私の細かい魔法文字を読んでいく。
「さすがなのだー」
「この細かさ!セイラにしか書けないのだ」
大丈夫ってことかな?この氷と水の術式で冷蔵庫と冷凍庫は発動するはずだ。最後に私の名前の印を書き込む。これで私にしか作れない……つまり、コピーできないものとなる。
冷気が逃げない箱を二人が作り、中の構造ともいえるものを私が作ったわけだ。
冷凍庫はマイナス20℃。冷蔵庫は2℃。この術式が難しかった。このセイラの賢いスペック様々である。
なぜ前世ではこの賢さのステータス消えたのよ?……と、いまだに引きずる私。
トトとテテは私を褒めてくれたが、二人も発明の天才と言われている。
しかし面白いもの、気に入ったものでなければ作らないという二人の性格が商売の邪魔をしていると思う。
学園は天才を何人も輩出しているが、どれも性格に難がある。変人とも言える。
私はクローゼットを開ける。いつまでも制服を着てるわけにもいかない。でも動きやすい服がいい。
男物の様な簡易な服を身に着ける。髪を一つに纏めると長身なのもあって、男らしい。なかなか似合うじゃない?と全身鏡の前で思う。
「お、お嬢様!?そのお姿は!?」
クロウが部屋から出てきた私に驚く。
「ちょっと温泉をひくための作業やお風呂屋さんを建てる手伝いがしたいのよ。……でもドレスを2着ほどでいいわ。頼んでおいて。いずれ社交界に出ないとダメでしょうから」
いずれ社交界に出ることがあるだろう。商売には宣伝がいる。ドレスがないので一応用意だけはしておこう。
「かしこまりました」
マントをバサリと羽織ったところでリヴィオが呆れたように言った。
「そこまでするかー!?」
「現場を見ておきたいのよ。なかなか似合うでしょ?」
複雑な顔をしていたが、自分も簡素なシャツにズボンといった服装で着いてきた。手伝ってくれるらしい。
「温泉♪おんせーん♪おーんせーん♪」
「なんだ?その妙に浮かれてんのは?」
ギクッとした。立派なことを言ったが半分以上は温泉に入りたい!ゆーーっくり湯船に浸かりたい!という本音がバレそうだ。
あわよくば一石二鳥で儲けようど思ったわけで……そうー?とトボケでおく。
源泉のところへ行くとトトがいた。
「あ!セイラどうかな?試しにつけてみたのだー」
す、素晴らしい!蛇口が完成していた。ちゃんとお湯と冷水と分かれている。
そして源泉の所は龍の口にしてって言う要望にお応えしてタラタラタラタラと龍の口から温泉が流れ出ている。
「素敵っ!!素晴らしいわ!!」
「ここからベントの建てている小屋の下流の方へお湯を引くのだねっ!?」
そうそうと力強く私は頷く。
「冷凍庫はコック長のアイスクリームを試しにいれているところなのだ。氷魔法の術式がうまく発動していれば成功なのだ」
「す、すごい。短時間で!じゃ、じゃあ、こんなのはできる?暖かい風をおこして髪の毛を素早く乾かしたり、衣服を洗うために回転する箱とか!!」
トトはニヤリとガーネットの目を三日月型にした。
「可能だ!!なんだその面白い発想は!どんどん言うのだ!」
私にビシッと指をつきつける。ドライヤーとかお風呂にあるといいよねぇ。後は使用済みのタオルも洗えるようにしたい。
トトはよーしっ!とダッシュで屋敷の方へ走っていった。
私もよーしっ!とお風呂へ入ろうとするとガシッとリヴィオに首根っこを抑えられる。
「えっ?」
「まさか、またこんなところで風呂に入らねーだろうな!?」
「ええっ!」
そのつもりだった。
「やーめーろー!おまえなぁ。仮にもお嬢様で女なんだぞ?」
「いや、でも見てる人いないし……」
「オレを無視すんなーっ!」
「真面目に仕事しろってことなのね?……もう!意外と真面目なんだからー」
私は配管のパイプを持ち上げる。反対側を持ち上げながら、ため息をつかれた。
「そんな意味じゃねぇけど…」
腑に落ちない様子で、小さく呟くリヴィオだった。
幸せな朝食をゆっくりと味わいながらリヴィオに話す。
「そろそろ護衛はいいわ。急遽頼んで悪かったわね」
えーっ!と小さい声だがメイド達の残念そうな声がする。
「しばらくいる」
キャーと嬉しそうなメイド達。
……な、なに!?この声?楽しそう。
美形男子ではあるけど。態度は残念なところがある。
そう!騎士団も辞めたと言っていたが、トラブルがあったことは間違いない。
「は!?なんで!?……聞きそびれていたわね。王都の騎士団に入ったのになんで辞めたの?」
「うるせー。いろいろあるんだよ」
いろいろがなんなのか説明しなさいよと思ったが話したくないから話さないのだろうから放っておこう。
「えーと、じゃあ、騎士団以外の就職もあるでしょ?『黒猫』なら引く手あまたじゃない。卒業するときもいくつも話があったでしょ」
欲しい人は山ほどいるだろう。こんな片田舎の娘の護衛してる場合ではない。
「護衛はいらないってことか?セイラは学園首席卒業の優秀な生徒だから自分の身は自分で守れるだろうよ」
口調がイライラしている。まずいこといったかな?
首席!?とヒソヒソメイド達が驚きの声をあげている。
私もこのスペック、前世でほしかったです。
テスト勉強要らずよ!本を一度読めば頭に入る能力。記憶力の能力が半端ない。
「居てくれるなら心強いけど、いつまでも引き止めておくのも悪いと思ったのよ」
「気にするな。いらない時がきたら、いらないと言ってくれればいい」
「そ、そう?じゃあ、お言葉に甘えてお願いシマス」
一体、王都の騎士団でなにがあったのよ!?帰りたくないという雰囲気が伝わる。
しかしリヴィオが居てくれるなら、安心だ。バシュレ家がなにか仕掛けてきても心強い。
絶対にバシュレ家は嫌がらせをしてくる。特にソフィアはしつこい。
朝食を終えて建築士のベント=アルーダと面会する。
「はー。なるほどねー。面白いね」
私の話を聞いて砂色の髪をし、メガネをかけた青年はそういう。この屋敷を建てたのは父だそうで、今は隠居してるらしい。後を継いでいるベントが来てくれた。
「しかし、そんなお風呂のスタイル、この辺の人たちに受け入れて貰えるのかなぁ?」
「確かに私もそう思う。だけどそれは目先のことで、考えているのはその先でもなのよ。とりあえずリサーチしたくて、まずはお風呂屋さんからよ」
「何を考えているかは聞かないでおくよ。バシュレ家の爺さんの血を受け継いでる君だしね」
「お祖父様のようにうまくできるかはわからないけどね」
そう前置きして、私が書いた簡単なラクガキ程度のなんちゃって設計図を渡す。
男湯、女湯、くつろげる畳(敷物)スペース、喫茶コーナーがある。
しばらくベントは眺めていたが快諾してくれた。
「オッケー!引き受けたよ。とりあえず作ってみるよ」
「お願いします」
私に深々と頭を下げられると困ったように笑う。
「簡単に頭を下げないでくださいよ。お嬢様は領主様になったのに」
「あ、あれ?そうね……つい」
頭を下げる………そうだ。お辞儀や接客の指導もしなくては!メイドや使用人を少し増やそう。募集しよう。やることいっぱいあるなぁ。
トトとテテが午後に到着した。屋敷の一室、地下室付きの大きい部屋を用意しといた。
「こんな感じの物を冷せる箱が欲しいのよ」
図にして書いて見せる。平置きタイプのアイスクリーム用の冷凍庫、業務用の冷蔵庫。アイスクリームも試食してもらう。
「わかりやすいのだ!」
「アイスクリーム?これは美味しいのだーっ!」
二人はキャッキャ言いながら、すぐに取りかかる。
足りない物や集めてほしい物があれば言ってねと声をかけるが、仕事を始めた二人の集中力はスゴイ。もう無言で工具を持ち、組み立てていく。
「えーと、この箱の術式とか一応考えてみたんだけど、どうかしら?」
トトとテテが私の細かい魔法文字を読んでいく。
「さすがなのだー」
「この細かさ!セイラにしか書けないのだ」
大丈夫ってことかな?この氷と水の術式で冷蔵庫と冷凍庫は発動するはずだ。最後に私の名前の印を書き込む。これで私にしか作れない……つまり、コピーできないものとなる。
冷気が逃げない箱を二人が作り、中の構造ともいえるものを私が作ったわけだ。
冷凍庫はマイナス20℃。冷蔵庫は2℃。この術式が難しかった。このセイラの賢いスペック様々である。
なぜ前世ではこの賢さのステータス消えたのよ?……と、いまだに引きずる私。
トトとテテは私を褒めてくれたが、二人も発明の天才と言われている。
しかし面白いもの、気に入ったものでなければ作らないという二人の性格が商売の邪魔をしていると思う。
学園は天才を何人も輩出しているが、どれも性格に難がある。変人とも言える。
私はクローゼットを開ける。いつまでも制服を着てるわけにもいかない。でも動きやすい服がいい。
男物の様な簡易な服を身に着ける。髪を一つに纏めると長身なのもあって、男らしい。なかなか似合うじゃない?と全身鏡の前で思う。
「お、お嬢様!?そのお姿は!?」
クロウが部屋から出てきた私に驚く。
「ちょっと温泉をひくための作業やお風呂屋さんを建てる手伝いがしたいのよ。……でもドレスを2着ほどでいいわ。頼んでおいて。いずれ社交界に出ないとダメでしょうから」
いずれ社交界に出ることがあるだろう。商売には宣伝がいる。ドレスがないので一応用意だけはしておこう。
「かしこまりました」
マントをバサリと羽織ったところでリヴィオが呆れたように言った。
「そこまでするかー!?」
「現場を見ておきたいのよ。なかなか似合うでしょ?」
複雑な顔をしていたが、自分も簡素なシャツにズボンといった服装で着いてきた。手伝ってくれるらしい。
「温泉♪おんせーん♪おーんせーん♪」
「なんだ?その妙に浮かれてんのは?」
ギクッとした。立派なことを言ったが半分以上は温泉に入りたい!ゆーーっくり湯船に浸かりたい!という本音がバレそうだ。
あわよくば一石二鳥で儲けようど思ったわけで……そうー?とトボケでおく。
源泉のところへ行くとトトがいた。
「あ!セイラどうかな?試しにつけてみたのだー」
す、素晴らしい!蛇口が完成していた。ちゃんとお湯と冷水と分かれている。
そして源泉の所は龍の口にしてって言う要望にお応えしてタラタラタラタラと龍の口から温泉が流れ出ている。
「素敵っ!!素晴らしいわ!!」
「ここからベントの建てている小屋の下流の方へお湯を引くのだねっ!?」
そうそうと力強く私は頷く。
「冷凍庫はコック長のアイスクリームを試しにいれているところなのだ。氷魔法の術式がうまく発動していれば成功なのだ」
「す、すごい。短時間で!じゃ、じゃあ、こんなのはできる?暖かい風をおこして髪の毛を素早く乾かしたり、衣服を洗うために回転する箱とか!!」
トトはニヤリとガーネットの目を三日月型にした。
「可能だ!!なんだその面白い発想は!どんどん言うのだ!」
私にビシッと指をつきつける。ドライヤーとかお風呂にあるといいよねぇ。後は使用済みのタオルも洗えるようにしたい。
トトはよーしっ!とダッシュで屋敷の方へ走っていった。
私もよーしっ!とお風呂へ入ろうとするとガシッとリヴィオに首根っこを抑えられる。
「えっ?」
「まさか、またこんなところで風呂に入らねーだろうな!?」
「ええっ!」
そのつもりだった。
「やーめーろー!おまえなぁ。仮にもお嬢様で女なんだぞ?」
「いや、でも見てる人いないし……」
「オレを無視すんなーっ!」
「真面目に仕事しろってことなのね?……もう!意外と真面目なんだからー」
私は配管のパイプを持ち上げる。反対側を持ち上げながら、ため息をつかれた。
「そんな意味じゃねぇけど…」
腑に落ちない様子で、小さく呟くリヴィオだった。