3回目のため息を吐きながら音楽アプリを起動する。
プレイリストの中から朝にちょうどいい曲を探して再生ボタンを押した。流行りのアーティストの隠れ名曲でアップテンポ過ぎず、暗すぎない、オシャレな曲だ。
男子高校生が朝から聴く曲じゃないかもしれないが、そんなのどうだっていい。誰も聞いてないのだから。

そう、誰も聴いてないはずなのだ。
「蓮くん!おはよー!」
気のせいだろう、いや、気のせいだと思いたい。
しかし、人間はなかなか現実から逃げ出せないもので俺は不覚にも振り返ってしまった。
「おはよう、凪咲」
「その制服双葉高校の?」
「そうだよ、凪咲のはうちの高校のじゃないね、その制服見かけたことはあるんだけど、、どこのだっけ?」
「白羽学園!」
白羽学園はここら辺ではトップの有名な共学の私立校。
凪咲、頭良かったのか
「きみ、頭いいんだね、意外だ。」
「そうだよ!一言余計だけど。蓮くんは?」
「よくも、わるくもない」
「つまんないの」
「面白みを求めない方がいいと思うよ」
「たしかにそれもそうだね、じゃあ私朝ごはん食べてくる!ばいばーい」若干失礼な返事をしてまた嵐のように去っていった。

自分の腹の虫も鳴いているのでそろそろ朝ごはんを食べに行こう。
部屋のドアを開けて1回に降りる。
まず、洗面所に向かって洗顔とうがいだけする。
それからリビングに向かう。
今日の朝ごはんはチーズトーストらしい。
「蓮、おはよう。お弁当そこにあるからね」と母がいつものように笑顔で声を掛けてくれる。
「おはよう、ありがとう」
自分はなかなかいい家庭に生まれたなとこういうときは思える。
自分の都合のいい時しかそう思えないのが憎たらしいが。