「送ってくれてありがとう!私の家ここなんだ」
そう言って彼女が立ち止まった家はうちの隣の家。
こんな漫画みたいなことあるのか。
「え、隣の家俺ん家なんだけど」
「知ってる。」
彼女はどこか幼さを感じる意地悪な笑みを浮かべた。
「蓮くんの家に挨拶に行った時に玄関で家族写真をみたんだ。そしたら海に蓮くんがいたから声掛けちゃった。まさか、叫んでるとは思わなかったけどね。」
なにがツボだったのか分からないが、彼女はまだ笑っていた。
「よくわかったね。後ろ姿しか見えなかったはずなのに」
「んーなんとなくだよ。なんとなく、あの子かなーって。」
俺は素直に感心した。自分なら確信が持てない人に声はかけない。
いや、もしかしたら彼女も確信なんてなかったかもしれない。
ただ、声を掛けた相手がたまたまさっきみた隣の家の男子だった。なんてこともあるだろう。なんでもいいけど。
「凄いね。じゃあよろしくね、お隣さんとして。」
「うん!あ、じゃあさ連絡先交換していい?」
「いいよ。はい、これでいい?」
メッセージアプリを開いて、友達追加を押す。
“Nagisa”が追加された。現在友達の数は278人。
「ありがと!じゃあまたね。お隣さん」
彼女はまた笑った。
「またね。」
なんだか、嵐のような子だった。
急に現れて、ずっと笑顔で沢山喋って、連絡先を交換して、隣の家に入っていった。
思い出したら急に疲労を感じて、家の階段を上る足がいつもより少し重く感じた。