不思議だった。
なぜあの呟きを聞いて笑顔でいるんだろう。
「友達になることはかまわないけど。どうして」
「さっきも言った通り、親近感が湧いたからだよ」
彼女はこれ以上事情を語らなさそうだった。
これ以上はなにも聞き出せないだろう。
よく分からない、不思議な子だったが嫌だなとは思わなかった。
むしろ、友達になってみたいと思った。
こんな自分に親近感が湧くのは気になる。
「そっか、わかった。」
「じゃあ私たちこれから友達ね。」
そう言って彼女は月並みな表現だけど、今までよりも太陽みたいに明るい笑顔を向けてくれた。
「私ね、昨日ここら辺に引っ越してきたばかりなんだ。」
実に珍しい時期の転校生だ。
「そうなんだ。良かったら案内しようか?」
まぁ、案内するほどのものもないけど。
「ううん、大丈夫。」
「そっか、俺はそろそろ帰るけど家はどの辺?」
彼女が答えた地区名は俺の家と同じだった。
せっかくなら一緒に帰ろうと言うことになった。


一緒に帰ってみて彼女について分かったことが幾つかある。
彼女はもともと都会に住んでいたこと。
ダンスが得意だということ。
海外に住んでいた経験もあって帰国子女だということ。
高校は俺と別だということ。
甘党だということ。どうやら食の好みは合わなさそうだ。

岩場からうちの住宅地までは歩いて10分ほど。
俺は自転車を押して歩いた。
彼女は10分でこれだけ自分のことを話すおしゃべりな子だった。