海沿いに位置する双葉高校を出て5分。
小さい頃によく遊んでいた岩場を抜けると静かな、でもどこかザワついた海が姿をみせる。
俺は岩場に座り込んで、リュックの中を覗いた。
昼休みに購買で買ったものの、まだ飲みきっていない炭酸飲料を見つけて、蓋を開けた。
ぬるかった。
というのも今は6月なのに真夏みたいな暑さなのだからぬるくなって当たり前だ。
そもそもこんなに暑くなくてもぬるくなると思う。
ぬるくなって、炭酸も抜けてきたものを少し口に入れた。
案外いけるなと思ったが、もう少し飲むかと言われたら飲みたくないのでこれ以上は飲まないことにしよう。
勿体ないけど家でなんとかする。

ここに来たのは3ヶ月ぶりだった。
海にはよく行っているけどこの岩場まで来るのは少し面倒でなかなか来ていなかった。
それに海に行くのは大抵友達と一緒で、この場所をなんとなく教えたくなかったから。
なんとなく俺だけの場所だと勘違いしているのだと思う。
ぬるくなった炭酸水のペットボトルを片手に俺は海を眺める。
この先はどこまで繋がっているんだろうか、というのは小説や漫画の主人公がよく言うことだがそんなことは考えないこととしよう。
なにも考えないでぼーっと眺める海ほど綺麗なものはない。
音楽でも聞こうかなと思ってリュックの中からワイヤレスイヤホンを出したけど、吹っ飛びそうだなので有線のイヤホンを探し出す。
鞄の奥底に手を突っ込んで探す。
結果的にイヤホンは見つかったけど、授業中にこっそり舐めてる飴玉のゴミも沢山でてきた。
そのほとんどはレモン味だった。
レモンは特に好きでもないが、嫌いでもない。
たまたまレモン味の飴が安かったのだろう。
家にあったものを掴み取りしてきただけの俺にはわからない。
飴というものは授業中に舐めてても案外気づかれないものらしい。
先生たちは本当は気づいてるけど呆れられて指摘されてないのかも。
うちの学校は特に頭がいい訳でもない、普通の学校だ。
田舎の学校で大学進学率も別に高くない。
大きな商店街もあるのでそのまま家業を継いだりする人が多い。
でもうちは店でもないので進路が決まっていない。
自分の進路は早めに決めるべきだとわかってはいる。
でも案外それは難しくてなかなか俺は決められないでいる。