ゆっくり朝ごはんを食べていると父がいつもつけっぱなしのテレビからいつもの朝のニュース番組の声が聞こえてくる。
「今日の天気はーー」
その声に聞き慣れてしまったがために逆に内容が入ってこない。
8時、部屋にバックを取りに戻って家を出る準備をした。
そして、奥の襖を開けて笑顔な金髪の少年の遺影に手を合わせた。
「いってきます。」と静かに言ったあと、母親にも大声で同じ挨拶をして家を出た。
自転車で住宅地を抜けて、海沿いの大通りに出る。
海沿いに位置する双葉高校は一応高いところにあるので毎朝坂を登らないといけない。
毎朝鉛のような足を動かしている気分になるのでこの坂は嫌いだ。

駐輪場に自転車を停めようとしたところで同級生の椿 日向(つばき ひゅうが)に出会った。
挨拶を交わして一緒に教室に行くと、クラスのみんなが笑顔で挨拶をしてくれる。
大丈夫。今日も俺は存在価値がある。
そう自分に言い聞かせて自分の席へと向かう。
俺の席は窓際の1番後ろという主人公ポジだ。
「なぁ、聞いてくれよ!さっきゲームでさーー」
「すご!それ俺も欲しかったなー」
「この前彼女がさーーーどうしたらいいと思う?」
「そうだなぁ、一旦今日は頭を冷やす日にしたらどう?」
「あの子からこんな返信あったんだけど、これってアリかな!?」
「いけるって!お前なら大丈夫!」
準備が終わってみんなの輪に入るとこんな話を沢山される。
別に嫌ではない、むしろ楽しい。
ただ、恋愛の話を俺に持ってきても俺は経験が豊富では無いので参考にならないと思う。
以前にそう伝えたことはあるが、「蓮に聞いて欲しいんだよ」と言われて以来俺なりに考えて答えるようにしている。