結局私は覗き見以外やりたいことがなく、それ以外は家でだらだらドラマの一気見とかして過ごしていた。

 これまでドラマは見たことなかったけど、これが意外と面白かった。ラブコメ、いい。凄くキュンキュンした。

 私が覗き見とラブコメでキュンキュンしている間に、あっという間に合格発表の日が来てしまった。

 パソコンの前に正座して受験番号とパスワードを打ち込んだ‥‥あとはポチっとするだけで合否がわかる。

「どうしよう‥‥怖くてポチっとできない‥‥」

「俺がしてやろうか?」

「いや!いい!自分のタイミングでする!」

「‥‥‥‥‥‥俺がやろうか?」

「いや、ちょっと待って!」

 ポチッ!

 たけちゃんが私の人差し指を押してポチっとしてしまった!

「あ!‥‥‥‥受かってた」

「おめでとう、のぞみ。よく頑張ったな」

「うん‥‥うん‥‥」

 落ちる気はあまりしてなかったけど、緊張の糸が切れ、なんだかもの凄く泣けてしまった。

 その日の夜はたけちゃんがご馳走を作ってくれてお祝いパーティーを開いた。

「のぞみ、国家試験合格おめでとう!」

「ありがとー!」

 たけちゃんが私でも飲めそうな甘めのスパークリングワインを用意してくれて、それで乾杯する。そう言えば、私はお酒を飲むのははじめてかもしれない。

「今日はお祝い以外にも、俺からのぞみに伝えたいことがあります」

「え?何々?またなんかの大会で優勝した?」

「のぞみ、俺は小学生の頃から、ずっとのぞみが好きだった」

「‥‥‥‥え?」

「中学の時も高校の時も、ずっと好きだった」

「え?何?ちょ、待って?」

「大学の頃には、好きが愛してるに進化した」

「‥‥たけちゃん?」

「俺はのぞみを愛してる。ずっと一緒にいて欲しい。だから、結婚しよう」

 結‥‥婚‥‥?

「のぞみ?返事は?」

 結婚なんて考えてみたこともなかった。私はただたけちゃんのそばにいたいだけで。それ以上は何も望んでなくて。

「私‥‥たけちゃんのそばにいてもいいの?」

「うん」

「ずっと?ずっとそばにいていいの?」

「うん、ずっと一緒だ」

 涙が溢れてボタボタとこぼれ落ちるのを感じたが、それを拭うのも忘れて私は叫んだ。

「する!私!たけちゃんと結婚する!」

 たけちゃんが満面の笑みを浮かべた。こんな顔、はじめて見た気がする。

「うん!しよう!」

 たけちゃんが腕を広げたから、私はそこに飛び込んだ。はじめてのハグだった。

 そして‥‥

「のぞみ‥‥愛してるよ‥‥」

 はじめてのキスは、甘いぶどうの味がした。