私のたけちゃん

　たけちゃんが小学校低学年の頃は近所でやっている柔道教室に通っていたので私も一緒について行ってたのだが、中学年になってもっと本格的な道場に通い始めてしまい、私は置いてきぼりをくらうようになってしまった。

　試合もあったはずなのに、たけちゃんが日程を教えてくれないので応援にすらいけない。

　柔道にたけちゃんをとられたような気分になり、私は柔道が嫌いになった。

　道場に通い続けてはいるものの、たけちゃんが中学で柔道部に入ったと聞いた私は喜んだ。

　私も中学生になったら柔道部に入ろう！小学生の時、私はたけちゃんと同じクラブや委員会に所属していたから、それは私にとってあたり前のことのように思えたのだ。

　だが、私は女子だから柔道部には入れなかった‥‥まあ女子柔道部があったとしても、そこにたけちゃんがいなければ意味がないので絶対入部はしなかったが。

　仕方がないので道場の外から練習を覗くのが私の日課となる。雨の日も風の日も毎日欠かさず覗いていたら‥‥梅雨に入った頃、顧問の先生が道場内に入ることを許可してくれたのだ。

　継続は力である。

　『マネージャーでもやるか？』と聞かれ、悩んだ末お断りした。だってたけちゃんが卒業したら柔道部に用はない。私はたけちゃんが好きなのであって、柔道はむしろ嫌いなのだ。

　柔道にも好きなところはある。それは坊主頭が強制されていることだ。

　たけちゃんは坊主頭でもかっこいい。キリッとした太い眉と猫のように大きな目、鼻はがっしりとして形がいいし、唇は薄いのに大きな口も凄くいい。

　中学に入って身長がぐんと伸びたが、燃費が良過ぎるたけちゃんは太りづらいのが悩みらしい。脂肪が少なくて筋肉がつきづらいそうなのだ。だがそこは努力でカバーし、中学生とは思えないバキバキの体をしている。

　でも中学生女子はサッカー部とかバスケ部とかに夢中で、柔道部で坊主頭のたけちゃんの魅力には気づかない。しめしめだ。

　今は市大会の予選が始まっていて、たけちゃんは個人で順調に勝ち進んでいる。去年は全国大会に出場したものの、惜しくも入賞を逃していた。

　県大会までは応援に行ってたのだが、全国大会は県外だったので行けなかった。たけちゃんが勝てなかったのは、多分そのせいだと思っている。

　今年の全国大会は東京だ。私はお小遣いとお年玉を使って応援に行くつもりで、既に下調べも完璧にしてある。

　全国め！今年こそしとめてやるからな！