その後私は禁断症状に悩まされた挙げ句、結局我慢できずに余裕のある日を見つけては道場へと足を運んでいた。

 たけちゃん目当ての女の子はあの時の子達だけではなく、誰もいない日は滅多にない。騒がなければ目立たないのに、キャーキャー騒ぐからすぐ追い出される。そのことに彼女達は気づけない。多分みんな馬鹿なんだと思う。

 タイミングが良ければスポ魂漫画のお姉ちゃんスタイルで覗き見が成功する日もあるのだ。

 はああ、道着姿のたけちゃん、かっこよー。

「ほら、関係者以外立ち入り禁止だよ!」

 いつものお兄さんに見つかってしまった‥‥

「すみませーん‥‥」

 残念だけど少しでも練習を覗けた今日はラッキーだ。おかげで勉強が捗りそうである。

 こんな感じで、私は学校と家の往復とたまに覗き見というなんとも地味過ぎる大学生活を送り、もうすぐ2年が経とうとしていた。

『大した距離でもないんだから正月くらい帰ってきなさい。どうせ家にいても勉強しかしてないんでしょ?』

 冬休み前、久しぶりにお母さんから連絡がきて休みの間強制的に実家へ帰ることになった。

 たけちゃんは冬休みを利用して2週間の免許合宿に行くそうなので、断る理由も特にない。

 だが場所が変わっただけで、やることはいつもと同じ。勉強してご飯を食べてお風呂に入って眠る。まあひとりだとそれが勉強だけに偏ってくるから良くないんだけど。

 夕食後、居間のこたつでみかんを食べていたら、彼女とのクリスマスデートから戻った兄に声をかけられた。

「おまえ高校の時と全然変わんないねー?女子大生なんだし、少しは努力しないとたけるに捨てられちゃうんじゃない?あいつ今モテモテだろ?」

「え?なんでモテモテだって知ってるの?」

「あーやっぱそうなんだ?雑誌にのってるの見たけど、坊主じゃなくなってだいぶイケメンになってたから、あれはモテるだろうなって思ったんだよー」

「雑誌‥‥?」

「え?おまえ、見てないの?確かこの辺にあったと思うけど‥‥ああ、これこれ」

 そう言って兄が投げて寄越した雑誌は、私が見たことのないスポーツ雑誌だった。付箋が貼られたページを開くと、そこに試合中と思われるたけちゃんの写真がいくつかのっていた。

「何これ‥‥かっこいい‥‥」

「ははっ!おまえ、相変わらずだなー?」

 呆れた様子で去っていく兄を無視してその記事を読んでみると、試合の相手はたけちゃんの因縁の相手高橋で、どうやらその記事は主に高橋を特集している内容らしかった。