同棲ではなく、同居だった。そう、完全に同居。冷静に考えるまでもなく、そりゃそうだという話である。

 あれから間もなく、私達は広めのダイニングがあるマンションに引っ越した。家具や家電は私が使っていたものをそのまま使い、ソファーとたけちゃんが使うものを買い足せば、問題なく生活をスタートさせることができた。

 とにかく私は引っ越しで遅れた分の勉強を取り返さなくてはならない。たけちゃんに色々やらせてしまうのは申し訳ない‥‥と考える余裕もない程、やるべきことがたまっていた。甘い空気が漂う隙なんてない。

 しばらくは学校に行く以外部屋に籠って勉強し続けていたが、たけちゃんが朝と夜にご飯の用意をしてくれるから食いっぱぐれることもなく、ついでに入浴も促され、必然的に着替えもするから、これまで以上にまともな生活を送れていた。

 そんな生活を続けて数ヶ月‥‥少しずつ勉強に慣れ、やっと余裕が出てきた。

 自分が使った食器くらい片付けようと思ったのだが、よく考えてみたらこれまでは全部たけちゃんがやってくれていたことに今更気づく。

 季節は既に秋。確かに暑さを感じていたはずなのに、気づかない内に夏が終わっていた。

「ちょっと待って‥‥嘘でしょ?」

 今日は何日だ?確か大学の大会は10月だと聞いた気がする。てか、予選は?

 慌ててネットで調べてみれば‥‥数日前に大会が終わっていた。そして結果は3位。これがいいのか悪いのか、私には判断ができなかった。

「どうしよう、あり得なくない?」

 大会前の大事な時期に、たけちゃんは自分のことだけではなく、私の衣食住の世話までしていたのだ。

「信じられない‥‥最悪じゃんか‥‥」

 毎日顔を合わせているはずなのに、まともにたけちゃんと話をしたのはいつだった?それすらも思い出せない自分に愕然としてしまう。

 ダイニングを見渡すと清潔に保たれていることが一目でわかった。そう言えば私の部屋もあまり散らかっていない‥‥たけちゃんが私のいない間に片付けて掃除をしてるのだろう。

 洗濯も‥‥お母さんが奮発してくれた乾燥機付全自動洗濯機があるとはいえ、ここに来てから一度も自分でやってない。あまり考えたくないが、下着も含めてたけちゃんが全部やってくれていたのだ。

「うわあああーーー!!!」

 頭を抱えて叫ばずにはいられなかった。あまりにも酷過ぎる。私は最低最悪だ。