それ以降、たけちゃんがよく家に来るようになった。と言っても、遊びにではなくて私の世話をするために‥‥

 そのおかげで私は人間らしい生活が送れているのだが、たけちゃんだって柔道や勉強があるし、寮とはいえ自分の身の回りのことは自分でしなきゃいけないはずだ。申し訳なさ過ぎるしこのままでいいわけがない。

 睡眠時間を削って勉強するのはやむを得ないと理解してくれているようなのだが、何日かに一度『私が寝るまでたけちゃんが帰らない日』がやってくる。今日はその日らしい。たけちゃんが課題を持ち込んで隣りで勉強していた。

「ねえ、たけちゃん。私、自分でちゃんとするから、こんな風に色々してくれなくても大丈夫だよ?」

「ん?遠慮してるのか?そんなの無駄だよ?俺はのぞみを信用してないからな」

 優しい口調と清々しい笑顔で誤魔化してはいるが、さりげなく酷いことを言われたような‥‥

「それに今、新しい部屋を探してるんだ。駅の方なら2部屋あるとこが結構あるから、いいとこが見つかったらそこに引っ越そうと思う」

 急に話が飛んだ気がするが、それより‥‥

「え?たけちゃん、寮を出ちゃうの?」

「ああ。寮って言っても安いのと学内にあるのが便利ってだけだしな。もう親の許可ももらってるし、できるだけ早くと思ってる」

「ふーん、そうなんだ‥‥」

 でもなんでわざわざ?という疑問を投げかける前に爆弾が投下された。

「だからのぞみも移動しやすいように少しずつ荷物を整理してまとめておけよ?」

「‥‥‥‥は?」

「のぞみも引っ越すんだよ。一緒に住めば単純に俺の負荷が減るからな。のぞみの親にも相談したけど、二つ返事で了承をもらえたよ」

「え?え?私も?引っ越したばっかだよ?」

「のぞみがグタグダになるって簡単に想像できたのに、本当もったいないことしたよな。まあ命に関わることだからもったいないとか言ってられないし、しょうがないな」

「いや、命に関わるって、そんな大袈裟な‥‥」

「のぞみ、まじで言ってる?俺が最初にここに来た日‥‥あと数日気づくのが遅かったら、確実に病院送りになってたと思うぞ?」

 それを言われたらぐうの音も出ない。あれは確かにやばかった。寝ると食べるの感覚が麻痺し始めていたと自分でも思う。

 でも‥‥一緒に暮らすって‥‥それって‥‥

 同棲!!!ってやつですよね!!?

 きゃーー!!なんのご褒美ですかーー!!