入学式が終わって授業が始まると、想像以上に大変な生活が待っていた。

 中2の時から人一倍勉強に精を出していた私でも時間が足りないと感じるのだから、よっぽどなんだと思う。

 とにかく課題の量が半端ない。予習をしておかないと、授業についていけそうにない。復習を怠れば試験で単位を落とすし、覚えることが多過ぎるのでその都度完璧に記憶しておかないと、国家試験の負荷が何倍にも増すだろう。

 慣れてくればもう少し効率良くこなせるようになるんだろうか?そうじゃなければ卒業する前に死んでしまいそうだ。

 徐々に睡眠時間が減っていき、ご飯を食べるのも面倒になってきた。やばいと思いつつも勉強に遅れを出したくなくて、何を優先すべきかが最早わからない。

 《ピンポーン》

 こんな時間に誰だろう?え?10時?いやいや、こんな時間に誰も来ないでしょ?え?何?やばくない?

 《ピンポーン》

 何これ、やばい、怖いけど、どうしよう‥‥

「のぞみ?いないの?」

「え?たけちゃん?」

 慌てて玄関に行きドアを開ける。

「どうしたの?」

「どうしたのじゃないよ、スマホ繋がらないから心配で‥‥てか、その顔どうした?凄い隈ができてるじゃんか‥‥のぞみ、ちゃんと寝てる?」

「いや、うん、一応‥‥少しは寝てる‥‥かな?」

「それ絶対寝てないじゃん。それに飯もちゃんと食べてないだろ?この短期間でどんだけげっそりしてんだよ‥‥どうせろくなもん食べてないだろうと思って色々持ってきたから、とりあえずなんでもいいから腹に入れとけ」

 たけちゃんは部屋に入ると持参したレジ袋の中からパンやおにぎり、バナナやヨーグルトなどを机に並べ始めた。

「おまえ、シャワーも浴びてないだろ?それ食べたら浴びてこい。女子大生とは思えない匂いを放ってるぞ?」

 たけちゃんの容赦がなさ過ぎて痺れる。

 私は素直にたけちゃんの指示に従い、おにぎりとバナナで手っ取り早くエネルギーを補給してからシャワーを浴びた。

 浴室から戻ると、部屋が綺麗になっていた。

「明日締め切りの課題があるのか?」

「いや、それはもう終わってる。けど復習がまだ少し‥‥」

「だったら今日はもう寝ろ。このままじゃおまえ、また貧血でぶっ倒れるぞ?今夜はのぞみが寝るまで見張らせてもらう。のぞみが寝たら帰るから合鍵出しといて」

 面倒だからと後回しにしていたことを、たけちゃんに怒涛の勢いで回収されてしまった。