ピピ、ピピ、ピピ、ピピ‥‥‥‥

 枕元に置いているスマホのアラームを手探りで止める。

 時間は朝の5時15分。窓の外はもうそれなりに明るいが、まだ薄暗い。

 私は眠い目を擦り、ベッドの中で一度大きく伸びをしてから起き上がった。パジャマのまま部屋を出て、そのままキッチンへと向かう。

 この時間、お母さんはまだ起きてない。雨戸が閉まったままの室内は真っ暗だからキッチンの電気をつけ、冷蔵庫で保管しているロールパンを取り出し皿に乗せて電子レンジで温めた。

 トイレに行き洗面所へ移動して顔を洗う。電子レンジの終了音が聞こえてきたのでキッチンに戻り、コップに牛乳を注いで温めたパンと一緒にテーブルへと運んだ。

「いただきます」

 パンと牛乳だけの朝食は味気ないが、目玉焼きやサラダを作る余裕があるならその時間を睡眠にあてたい。

 横着な私はキッチンからの明かりが漏れる薄暗いダイニングで、マーガリンもつけていないロールパンを牛乳で流し込んだ。

「ごちそうさまでした」

 皿とコップをシンクに置いて、歯を磨きに行く。軽く寝癖を直して髪をうしろで一本に結った。

 部屋に戻ってベッドを整え、時間割を確認しながら持ち物を揃える。最後に制服へ着替えて準備完了だ。

 ここまで15分ちょっと。そろそろ急がないと間に合わない。慌てて階段を降りて、玄関へと向かう。

「いってきまーす」

 家族を起こさないように極力音を立てないように気をつけてはいるが、例え小声でも挨拶を欠かさないのは私のポリシーだ。

「よしよし、今日も無事間に合った」

 わざわざ早く家を出るのは、しばらく門の前で待機するためである。待つこと数分、隣の家の玄関が開いた。

「たけちゃん!おはよう!」

「ああ、おはよう」

 本郷尊(ほんごうたける)、15歳。

 まだ中二病を拗らせてるのか、最近妙にそっけない。まあそれもまたよきかな、だ。

 学校までは歩いて20分弱。朝練のため6時に学校に行くたけちゃんにあわせるため、私も毎朝この時間に家を出るようになった。だってたけちゃんと一緒に登校したいから。

 たけちゃんは小1からずっと柔道を続けていた。中学の部活はもちろん柔道部で、今はキャプテンをしている。たけちゃんは大会でいつも優勝しているので、多分凄く強い。

 毎日欠かさずたけちゃんの練習に同行している私は、自称柔道部のマネージャーだ。仕事は主にたけちゃんの応援である。