たけちゃんが私のことを本当はどう思ってるのか、知りたいけれど聞けないまま、更に数日が過ぎていた。

 私とたけちゃんの会話はほとんどの場合私から話しかけなければ始まらない。だからここ数日は無言のままでいることが多かった。

 いつもと明らかに様子の違う私にたけちゃんが気づかないはずもなく、心配して声をかけてくれることが増えていた。

「のぞみ、元気ないけど、やっぱり具合悪いんじゃないのか?」

「テストが近いからいつもよりちょっと眠いだけだよ、大丈夫だから心配しないで?」

 無理に笑顔を作って返事をする。作り笑顔を少しでも隠したくて前髪に手をかけると、前髪を止めているピンに指先が触れ、数日前から髪型を変えていたことを思い出した。

 小さい頃はおでこの傷を目立たせないようにお母さんが前髪を多めにカットしていた。なんとなくそのままにしていた前髪を、数日前にサイドへ流れるようにカットしてピンで止めたのだ。

 目立たないとはいえ完全に傷が消えたわけではない。だが、ちょちょっとコンシーラーでカバーすれば、傷はほとんど見えなくなった。

 たけちゃんに責任なんて感じて欲しくない。

 そう考えて出したおでこだった。

 髪型を変えた日の朝、私を見たたけちゃんはおでこではなく見えないはずの傷を凝視し‥‥わずかに息を吐いた。

 何か言われたわけでもないし、たけちゃんの態度もこれまでと変わらない。でもたけちゃんは、私の傷が消えていることに明らかにホッとしたのだ。

 そのために髪型を変えたというのに、そのことにショックを受けた。自分が何をどうしたいのか、益々わからなくなってしまう。

 悪い方に悪い方に、どんどん思考が深みへとはまっていく。

 テスト前だし勉強をしているのは間違いないのだが、眠れないから勉強しているといってもいい状態が続いていた。

 食欲もあまりなく、気づけば中2の頃の体重に戻りつつある。

 私はたけちゃんのことが好きだからいつだってたけちゃんのそばにいたいし、一緒に過ごす時間は楽しくて、いつも幸せだと感じていた。

 だが、たけちゃんが私を好きじゃないかもしれないと考え始めてから、楽しいどころか不安や罪悪感ばかりがつのり、息苦しさすら感じるようになってしまった。

 たけちゃんを好きな気持ちに変わりはないけど、こんな気持ちのままたけちゃんのそばにいてもつらいばっかりだ。

 でも、たけちゃんから離れたくない‥‥

 私の心は矛盾で溢れて今にも弾けそうになっていた。