予定より早めに業務を開始することにした優。
理子が泣きついてきた午前分のスケジュールについては、確かに彼女が消してなくなっていた。
どうして消しちゃったかな……と思いつつも、三人で記憶を辿り、なんとかカレンダーを埋めることで解決したのだ。
午前分だけだったことが幸いだった。
理子には何度も謝られたが、「気にしないで」と、笑顔を向ける。

 後輩が何かミスをしても、厳しくしないのが優のルールであった。
彼女たちに恐れられるようなウザい対象になるのは嫌であるし、他人を厳しく叱るのは性に合わない。
絶対に仕事はやりやすい方がいい。
優も新入社員の頃に既に寿退社していなくなった先輩たちに、親切に指導してもらっていたので同じようにしたいと思っていた。

 今日も今日とて笑顔を浮かべ顧客を迎え、社員たちに挨拶をしていく。
時々頬の筋肉が攣るのではないかと思うくらい笑みを浮かべ続ける。
休憩を待ち遠しく思うが、遅番である優は三人の中で一番遅くに休憩の時間が回ってくる予定なので、まだまだ先は長い。
しかし、今日は一番早く休憩を取ることになった。
今朝の騒動で早く業務を開始したことを理子は大変気にしていた。

「優さん、休憩を変わりましょう。そうでなければ私は申し訳なくてお昼から仕事ができません!」

 涙目でそう何度も懇願されたのだ。
優は彼女の好意に甘えて休憩を先に取ることにし、更衣室へ行きスマホを取り出しメッセージをチェックした。
休憩時は心のことで瑞樹や両親から連絡が入っていないか、ます必ず確認するのだ。

 メッセージは二件。
一つは広告で、もう一つは瑞樹から。
後者は、二分前に送られてきたもので、慌ててそれを開いた。

 “お疲れ様。今夜はそこまで遅くならなそうだよ。夕食までは大丈夫だからね。いつもありがとう”

 まるで同居をしている相手に送るような文面。
優はしばらくその画面を見つめた。