はぁっ、はぁっ…。

もう、ここなら誰にも見つからないかな…。

暗い夜の中、狭い路地裏に一人で立つ。


私は、桜 乃愛(サクラ ノア)。高校2年生。

ただ今――逃げています。



私は、高校に入学したと同時に親に捨てられた。

もともと、私の本当の両親は私が幼い頃に亡くなっている。
施設に入っていた私を引き取ったのが今の両親。

最初は割と”親”をしてくれていたけれど、少し経ったとき、妹の蘭愛(ラナ)が生まれた。

私を欲しがったのは子どもが生まれず、家を継ぐ人がいなかったから。

蘭愛が生まれた以上、私にはもう用がない。

それからの生活は辛く、厳しかった。


高校に入学して家から追い出された時は、悲しみや寂しさもあったけど、解放感のほうが強かった。


一人暮らしすることになった私は、楽に暮らそうと思っていたのに…。

なんと暮らしている街には、いわゆる裏社会、あっちの人たちが多くいた。