一体、どうしてこんなことになったのかはよくわからない。
 ただ事実としてあるのは、私が純白のドレスを着ているということだ。

「綺麗ですよ、フェレティナ様」
「ありがとうございます。リヴェルト様も似合っていますよ」
「そうですか? そう言っていただけると、僕の方も自信が出てきます……しかし、どうしてこんなことになっているのでしょうかね?」
「わかりません……」

 今日は、私達の結婚式の日だった。
 本来ならそれは、開催しない予定だった。しかし何故か、こうなってしまっている。

「お義母様、本当にお綺麗です。アドールも、そう思うよね?」
「ええ、本当によく似合っていますね……」
「私も将来、あんな風に……」

 この結婚式を強行した二人は、私のことを見ながら笑っていた。
 その笑顔を見ていると、こちらも思わず笑顔を浮かべてしまう。
 別にこれが、迷惑という訳でもない。二人は厚意で開いてくれた訳だし、それでいいのかもしれない。そもそも、小規模な結婚式であるし。

「ハルベルク殿、ご両親はどちらに?」
「少し遅れているようです。ご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ありません」
「ああいえ、お気になさらずに」

 ロナーダ子爵とお兄様は、色々と動いてくれていた。
 強行したのはアドールとエメラナ姫だが、段取りなどはこの二人が行ってくれたそうだ。息子と妹の結婚式に、二人とも結構張り切っているらしい。

「あ、伯父様。今日はありがとうございます」
「アドール、久し振りだな。また背が伸びたか?」
「そうかもしれません……えっと、叔母様達は?」
「こっちの様子がわからなかったからな。待機してもらっている」

 ストーレン伯爵家の方々にも、今日は来てもらった。
 後は私のお父様とお母様が来たら、今日のメンバーが揃う。これは身内だけで行う、とても小規模な結婚式なのだ。

「まあ、せっかく開いてもらったのですから、今日は頑張りましょう……楽しみましょうとかの方が、良いのでしょうか?」
「どうでしょうかね? 私達は皆さんを招いている立場である訳ですし」
「……義父上、義母上、そんなに固くならないでくださいよ。今日は楽しい催しのつもりです」
「ああ、そうなのね」

 私とリヴェルト様が話していると、先程までストーレン伯爵と話していたアドールがやって来た。
 彼は少し得意気に言葉をかけてきた。少なくとも彼は、この結婚式を既に楽しんでいるようだ。
 それに私とリヴェルト様は、顔を見合わせる。気持ちは同じだ。アドールがそのようにはしゃいでいるのが、嬉しかった。

「そういうことなら、楽しみましょうかね?」
「ええ、リヴェルト様。そうしましょう」
「ふふ、それでいいのです。今日はとても幸せな一日なのですから」

 きっとこれからも、私達の幸せな日々は続いていくだろう。
 三人で笑い合いながら、私はそんなことを思うのだった。


END