アドラス様の末路に関しては、ストーレン伯爵が調べてくれた。
 その末路というものは、悲惨なものだったらしい。あのストーレン伯爵でさえ、同情していたくらいだ。
 とはいえ、これでヴェレスタ侯爵家の憂いの一つがなくなったことは事実である。アドラス様は、名実ともにこの世からいなくなったのだから。

「母上、という訳で全てが終わりました」

 その諸々の報告を、私達はしに来ていた。
 目の前にあるお墓で眠っているのは、アドールの実の母親だ。今日は彼女の命日ということもあって、関係者ほとんどが集まってここに来たのである。

「……お前が亡くなってから随分と経ったものだな。アドールも大きくなったものだ」
「お義母様、私とアドールは今も仲良くやっています。アドールのことは、任せてください。私がしっかり、支えますから」

 ストーレン伯爵は、当然のことながら生前の彼女を知っている。エメラナ姫も、何度か会ったことはあるようだ。
 私とお兄様、それからリヴェルト様は実際に会ったことはない。ただ、心優しい女性だったということはわかっている。アドールを見れば、それは簡単にわかることだ。

「結局の所、事態は丸く収まった訳か」
「ええ、そういうことになりますね。何はともあれ、良かったと思っています」
「俺はほとんど蚊帳の外だった。情けない限りだ。色々とあったとはいえ、アドラスは一応妹の仇だったというのに」

 お兄様とリヴェルト様は、そのような会話をしていた。
 私はそれを聞きながら、アドールの隣に立つ。

「……私は、これからもアドールの母親であり続けるつもりです。でも、私はあなたの代わりにはなりません。私は私ですから」

 私は、ゆっくりと言葉を発した。
 ここに立つと、いつも緊張してしまう。アドールのことをどこまでも思っていたという彼女に対して、私の気はどうしても引き締まるのだ。

「心配をしないでいいなんて言っても、無理な話かもしれません。だけど、それでもこれは私にとっては譲れないことです。アドールの傍にいたいと、私は思っています」
「母上、義母上は僕にとって大切な人です。いつも支えてもらっています。僕は恵まれているのでしょうね。二人の母から、こんなに大切に思ってもらえて……周りの人も良い人ばかりで」

 私の言葉の後に、アドールはそっと呟いた。
 彼は、穏やかに笑みを浮かべている。その笑みを見ていると、私の心も落ち着いた。
 その笑顔を、これからも曇らせたくない。私は改めて、そう思うのだった。