「ストーレン伯爵家、ね……」
「ええ……」
私達がした諸々の連絡の中で、最も早く返信があったのはストーレン伯爵家からだった。
その伯爵家は、アドールの実母であるセレティア様の実家だ。つまりアドールにとっては、親戚にあたる人達がいる。
といっても、セレティア様が亡くなってから、両家の交流はほとんどなかったという。私との結婚の話が出る頃には、関係がほぼ途切れていたそうだ。
「まあ、僕は結局の所、ヴェレスタ侯爵家の人間である訳ですからね。ストーレン伯爵家の方々からすれば、それ程興味深い存在という訳でもなかったのでしょう」
「えっと、現ストーレン伯爵はセレティア様のお兄様にあたる人なのよね? どのような人なのか、アドールは知っているのかしら?」
「冷静沈着な方だったように思います。もちろん、それは対外的な顔でしかないのかもしれませんが……」
私の質問に対して、アドールは少しその表情を強張らせた。
それはつまり、彼が伯父のことを少し恐れているということなのだろう。少なくとも、表面上は親しみやすいタイプではなさそうだ。
内面が優しい人であるという可能性も、ないという訳ではない。ただ、少し計画しておいた方がいいだろうか。
「しかし伯父様が、訪ねて来るなんて意外です。僕のことを気遣ってくれているということでしょうか?」
「まあ、そうなのではないかしら」
「……」
アドールの言葉に、私はリヴェルト様と顔を見合わせていた。
このタイミングで訪問してくるストーレン伯爵の意図は、二つに一つだと考えられる。
一つは、アドールの言う通り心配しているから。もう一つは、ヴェレスタ侯爵家を狙っているから。
「もう出発しているということから、明日にはこちらに着くようですね? アドール侯爵令息、部外者である私は同席することはできません。フェレティナ様とともに、どうか頑張ってください」
「ええ、もちろん頑張ります。無礼がないように努めます」
リヴェルト様が声をかけると、アドールは少し緊張した面持ちで言葉を返した。
彼は聡い子だ。私達のやり取りから、ある程度のことを理解したのかもしれない。
とはいえ、まだ後者と決まっているという訳でもない。何事も悲観的に考える必要はないだろう。楽観的に考えられるという訳でもないが、もう少し気楽でもいいはずだ。
「アドール、私が付いているのだから、心配なんてしなくていいわよ?」
「フェレティナ様……ありがとうございます。とても心強いです」
私が声をかけると、アドールは笑顔を浮かべた。
そんな彼を不安にさせないためにも、私がちゃんとしなければならない。今からストーレン伯爵にどう対応するか、考えておくとしよう。
「ええ……」
私達がした諸々の連絡の中で、最も早く返信があったのはストーレン伯爵家からだった。
その伯爵家は、アドールの実母であるセレティア様の実家だ。つまりアドールにとっては、親戚にあたる人達がいる。
といっても、セレティア様が亡くなってから、両家の交流はほとんどなかったという。私との結婚の話が出る頃には、関係がほぼ途切れていたそうだ。
「まあ、僕は結局の所、ヴェレスタ侯爵家の人間である訳ですからね。ストーレン伯爵家の方々からすれば、それ程興味深い存在という訳でもなかったのでしょう」
「えっと、現ストーレン伯爵はセレティア様のお兄様にあたる人なのよね? どのような人なのか、アドールは知っているのかしら?」
「冷静沈着な方だったように思います。もちろん、それは対外的な顔でしかないのかもしれませんが……」
私の質問に対して、アドールは少しその表情を強張らせた。
それはつまり、彼が伯父のことを少し恐れているということなのだろう。少なくとも、表面上は親しみやすいタイプではなさそうだ。
内面が優しい人であるという可能性も、ないという訳ではない。ただ、少し計画しておいた方がいいだろうか。
「しかし伯父様が、訪ねて来るなんて意外です。僕のことを気遣ってくれているということでしょうか?」
「まあ、そうなのではないかしら」
「……」
アドールの言葉に、私はリヴェルト様と顔を見合わせていた。
このタイミングで訪問してくるストーレン伯爵の意図は、二つに一つだと考えられる。
一つは、アドールの言う通り心配しているから。もう一つは、ヴェレスタ侯爵家を狙っているから。
「もう出発しているということから、明日にはこちらに着くようですね? アドール侯爵令息、部外者である私は同席することはできません。フェレティナ様とともに、どうか頑張ってください」
「ええ、もちろん頑張ります。無礼がないように努めます」
リヴェルト様が声をかけると、アドールは少し緊張した面持ちで言葉を返した。
彼は聡い子だ。私達のやり取りから、ある程度のことを理解したのかもしれない。
とはいえ、まだ後者と決まっているという訳でもない。何事も悲観的に考える必要はないだろう。楽観的に考えられるという訳でもないが、もう少し気楽でもいいはずだ。
「アドール、私が付いているのだから、心配なんてしなくていいわよ?」
「フェレティナ様……ありがとうございます。とても心強いです」
私が声をかけると、アドールは笑顔を浮かべた。
そんな彼を不安にさせないためにも、私がちゃんとしなければならない。今からストーレン伯爵にどう対応するか、考えておくとしよう。