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 翌朝。


 ……あれ?


 学校に着いて、自分の机の中を覗きこむと、昨日市川くんに渡したファイルが入っていた。


 ちゃんと感想を聞かせてくれるんだと思っていたのに。

 もう、わたしとは話もしたくないってことなのかな。

 そんなにわたしに友だちだって誤解されるのがイヤだったの?


 そんなことを考えていたら、また涙が出そうになった。


 カバンにしまう前にファイルの中身をチラッと確認すると、見知らぬ紙切れが一枚紛れ込んでいた。


 手書きのメモ……指摘箇所のメモだ。

 こんなに細かく読んでくれたんだ。

 いつものめり込むようにしてマンガを読んでいた市川くんの表情が、頭の中に浮かぶ。


 わたしのマンガは、いったいどんな表情で読んでくれたんだろう。


 そう考えただけで、胸がいっぱいになる。


 今すぐ市川くんにお礼が言いたい。

 けど……友だちでもないわたしに話しかけられたりしたら、迷惑だよね。


 この日の午前中、なぜか市川くんは、待っても待っても教室に現れることはなかった。