「やっべ! すげーな、山村‼ これ雑誌に載んのか? え、新連載? 単行本になんのか⁇」

 市川くんが、聞いたことのないような興奮した声をあげる。

「ち、ちょっと待って! そんなの、全然まだまだだよ。ただの佳作だから。これからまだまだがんばって、もっと上の賞を取らないといけないんだよ」

「うわぁ、そっか。それは、うれしいけど、悔しいよなあ。でも、山村ならきっといつか届くよ」

「うん。市川くんがそう言ってくれるなら、わたしもそんな未来を信じて、もうちょっとがんばってみるよ」

「おう、がんばれ」

「……ねえ。また、マンガの相談に乗ってもらえる?」

「だから、オレに近付くとまた危ない目に……」

「わかってるよ」

「わかってねえよ。もうケンカはしねえって決めてんだから。今回みたく、次もなんとかなるって保証は、どこにもねえんだからな」

「それでも! わたしは市川くんと一緒にマンガが作りたいの。それに、『わたしたち、友だちなんだよ』って、クラスの子たちにも言いたいし、市川くんが友だち想いのいい人だってことも、もっとみんなに知ってほしい」


 市川くんのことを見上げると、市川くんもわたしのことを見下ろしていて。

 しばらくの間見つめ合ったあと、市川くんは諦めたように大きなため息を吐いた。


「ったく、しょうがねえなあ。どんなダメ出しされても、泣くんじゃねえぞ」

「それじゃあ……」

「ああ。今度こそ、てっぺん獲るぞ!」



(了)