「⁉ ひょっとしてだけど、あのとき一緒に入れてくれた、アドバイスのメモって……」

「ああ。オレからのやつもあるけど、母さんに聞いたやつも一応入れといた」

「ちょ……そういうことは、ちゃんと言ってくれないと」

「すまん。勝手に他人に見せて」

「いや、そうじゃなくて……それもそうだけども」


 頭が混乱する。


 わたしのマンガを、白崎先生が読んで、しかもホメてくれたって……?

 なにこの世界線。

 奇跡?

 今、人生最大の奇跡が起こってる⁇


「もっと素人っぽいマンガかと思ったら、全然めちゃよかったからさ。あそこまで描けてなかったら、オレだって母さんにアドバイス求めたりしなかったよ」


 これは、最大級の賞賛と受け取ってもよろしいでしょうか?


「……ああっ、もう! じゃなくて! もうあんな危ないこと、絶対にしないで」


 あまりの衝撃に、一番大事なことを言いそびれるところだった。


 市川くん……ボロボロだよ。

 腫れあがった頬とか、血のにじんだ絆創膏の貼られた口元とか。

 思わず目をそむけたくなったけど、わたしは市川くんの顔をじっと見つめ続けた。


「ケガ、大丈夫?」

「ああ。思ったより早くけーさつが来てくれたから、助かったよ」

「わたし、市川くんになにかあったらって思ったら……」


 そう思ったら、怖くて目が開けられなかった。

 音も聞きたくなかった。

 ……すごく怖かった。

 市川くんが、もしこの世からいなくなっちゃったらって思ったら。


「もう、ケンカはしないで」

「だから、今日もしてねえって」

「そうだけど……そうじゃなくて」

「あのさ、山村。なんでそんなふうに言ってくれんの?」

「え……」

「クラスのやつらには、クラスメイトとしてすら認められてねーのに」


 なんでって……。