「てめえら、それ相応の覚悟はできてるってことだよな」

 かあっと頭に血が上ったような顔をした市川くんが、低い声でそう言うと、拳を振り上げ男たちに突っ込んでいく。

「ダメだよ、市川くん! 前に約束したよね⁉」

「は⁉ んなもん知るか‼」


 がつんっと骨と骨が当たる音に、ぎゅっと目を閉じて顔をそらすと、両手で耳を塞ぐ。


 イヤだ、イヤだ……おねがい、もうやめて……!


「そこの君たち、止まりなさい!」

 野太い大人の男の声とともに、重たい足音がいくつも近づいてくる。

「やべっ。こいつ、サツ呼びやがったのか⁉」

「おい、早く行くぞ!」


 バタバタと一斉にこの場を離れようとする軽い足音と、先ほどの重たい足音が交錯する。


「あなた、大丈夫?」

 わたしのすぐそばで、女の人の声がする。

 ガクガク震えながらそっと目を開けると、目の前に、制服姿の女性のおまわりさんがいた。

「ち、違うんです。市川くんは、わたしを助けに来てくれただけで……だから、違うんです……!」

 両耳を塞いでいた手を離して、おまわりさんの腕を思わずぎゅっと握る。

「落ち着いて。警察署の方で、ゆっくりお話聞かせてくれる?」

 わたしが小さくうなずいて見せると、おまわりさんはそっとわたしの手を取って、立ち上がらせてくれた。