初めて琉那先輩と遊んだ日から一気に距離が縮まって今では、1日を通して琉那先輩と一緒に居ることが多くなった。
そんなある日琉那先輩は友達の星月 流星という人を連れて来た。
「はじめまして春雨耀太です」
「…はじめまして!でもまさか、琉那が歳下派だったなんて!俺は聞いてないぞ!」
琉那先輩にバックハグをしながら絡みつく。
「言ったろー?耀太は友達!」
「俺はどうなんだ!?琉那~」
「あーもーしつこいなぁ!」
でも、琉那先輩は鬱陶しいという顔より鬱陶しいけど楽しいといった感じの表情をしていた。
「えっと…」
「あぁ、ごめんごめん。ところで今日放課後暇?」
「はい、暇ですけど…」
「俺は成績が酷い有様だから勉強付き合って欲しくて」
「僕歳下ですけど」
「歳下でもお菓子や水分補給のサポートぐらいは出来るだろう」
「まぁ、そのぐらいなら」
何だか星月先輩と目線が合わないことに引っかかるものを感じながら僕達は琉那先輩の家へと向かった。
琉那先輩の家に着くと琉那先輩がお茶と菓子の準備の為に席を外す。
「なぁ、春雨さん」
「はい?」
「君は琉那のことが好きなのか?」
「好きかどうかはわかりませんが、とても大切な人です」
「ふぅーん…でも、俺は琉那が好きだ。愛してる昨日今日知り合ったばかりの輩に取られたくない。俺は容赦しない、それだけ言いたかったんだ」
「…」
その後琉那先輩が戻って来たことにより、星月先輩とは気まずい雰囲気のままその日は解散となった。
「おはよう、耀太」
「あっおはようございます」
「テスト見てくれ!追試回避出来たぞ!」
琉那先輩が自慢気に30点のテストを見せる。
「おめでとうございます!それじゃあ今日の放課後は暇ですか?」
「あぁ、暇だが。どうした?」
「大事な話があるので絶対空けておいてくださいそれじゃ、放課後お迎えに行きますから!」
僕はそう言い先輩と別れるとその後は琉那先輩にどうやってこの気持ちを伝えようかと悩んでいた。
放課後
僕は荷物を纏めて先輩の元へ向かう
先輩の居る3階へ辿り着き先輩のクラスの前に立つと
「…ったく…どうしたらいいんだよ…俺耀太が好きなのに…」
スマホ片手に机に突っ伏し、髪を手で掻き分け項垂れる先輩の言葉を聞いた僕はその場にしゃがみこみ思わず洩れそうになる歓喜の声を両手で堪え
自分が落ち着くまでそのまま動けずに居たのだった。
あの日から数日先輩には覗き見していたことに気づかれなかったのかいつも通りに接してくれている。
だが、先輩の気持ちを知ってしまった僕は先輩とは少し気まずくなった。
先輩のことは好きだが恋愛感情なのかは分からないし、そもそも同性だ。
「先輩…僕」
「耀太、俺…」
「あっ…先輩先どうぞ」
「耀太が先に言ってくれ。俺のはちゃんと言い出せるかも分からないし…」
「…わかりました。先輩ごめんなさい!僕、星月先輩との会話聞いちゃって…」
「…は?!じゃあその後の…」
「見てました」
はぁ〜と溜息を吐きながら琉那先輩は手で頭を覆う。
あわあわしている僕の方を真っ赤な顔をした先輩がチラ見している。
「先輩、わざとですか?」
「仕返し」
「仕返し…」
「だって…俺だけ気持ちバレてたんじゃん…」
「先輩…」
「だからからかった、ごめん」
「もう…いいですよ。僕も盗み聞きしちゃいましたし」
「…じゃあ、改めて聞くけど、俺と付き合ってください」
「星月先輩の告白は断ったんですか?」
「それはまだ…でも今ここでメッセージ送る」
と琉那先輩はスマホを取り出し星月先輩にメッセージを送ると送信画面を僕に見せた。
「わかりました、じゃあ星月先輩との話を断ってからまた告白してください。返事はその時にします」
「わかった」
その日の夜琉那先輩からメッセージが届いた。
"流星の話断ってきた。だからさ、俺と付き合ってください"
"はい!喜んで!"
そうして僕達は付き合い始めた。
あの日から1週間僕達は晴れて恋人同士となり
今日も手を繋ぎ学校に向かう。
だが、この日は何だかスーツ姿のおじさんが周りを徘徊していたりと辺りの様子がおかしかった。
「る…」
「危ない!」
歩道を歩いていると車道からトラックが僕目がけて突進して来た。
そのトラックから僕を庇って先輩は血を流し僕にもたれかかる様に倒れ込む。
「琉那先輩!琉那先輩!」
何度呼びかけても琉那先輩はその後目覚めることはなかった。
あの日から僕は学校にも行けなくなった。
通学路、校舎、教室琉那先輩との時間を共有した場所、物事が思い出されて辛くなる。
部屋からも出ず引きこもり、親に心配をかけて居る。
「耀太、お客さんよ」
母さんが僕の部屋をノックする。
扉の前から星月先輩の声が聞こえてくる。
「耀太くん、星月です。琉那と凄く仲が良かったみたいだから心配でな…つい来てしまった。俺とは会いたくもないだろう。だが、開けて貰えないだろうか」
「何の用ですか」
「元気なのか確認したくてな…元気そうで良かった。また、学校で会えるのを楽しみにしてるからな!また、琉那のことでも語り合おう」
そうして星月先輩は帰って行った。
そして僕はスマホの通知音で現実へと引き戻される。
"なぁ、元気か?"
友達が気を使ってくれたのかメッセージが沢山来ていた。
"身体は元気"と送ると
"飯、行かね?"と返ってきた。
その優しさに甘え僕は友達とご飯を食べに出かけた。
友達と牛丼屋で合流すると駐車場から大量のスーツ男達を連れて星月先輩が歩いて来た。
そして僕は確信した。
琉那先輩を殺したのはそして僕を狙って居るのは星月先輩だってことを…
ヤバいとパニックになりながら僕はとにかく人目が付く牛丼屋店内へと逃げ込もうとする。が、スーツ男に死角から押さえられ、身動きが取れなくなる。
横を見ると友達も同様に押さえつけられて居た。
「星月先輩どういうつもりですか」
「俺はな…琉那のことを愛してると言ってただろ?なのに琉那に選ばれたのはポッと出たお前だ。俺はそれが気に入らない、許せない」
「だからって殺すのは違うじゃないですか!」
「…そうだな、琉那を殺すつもりはなかった。お前さえ居なくなれば満足だった。だから、お前とそのお友達には此処で口封じをしてやろう」
「…」
もうかける言葉もなかった。
このままでいたら琉那先輩とまた会えるのでは…と思った。
「かける言葉はない、か…そうか」
そう言って星月先輩が僕の首に包丁を向けた瞬間
僕は思わず目をつぶった。
「そこまでだ!」
と沢山の警察官が星月先輩を取り押さえて連行したのだった。
数年後
「琉那先輩。じゃあ、いってきますね」
琉那先輩の写真の傍に一輪の花とお菓子を供えてから挨拶を済まして家を出る。
その後、警察官からの提案で引っ越した僕は琉那先輩のことを毎日想いながら今を過ごしている。
𝑒𝑛𝑑