「お嬢様、おはようございます。起きないと遅刻しちゃいますよ。」
モーニングコールと共に優しく肩を揺さぶられる。
(むにゃむにゃ、、、もうちょっと寝たい、、、)
「ふぶき、おはよう」
「!!!?あ、め」
突然甘い声で耳元に囁かれた私は、声にならない悲鳴をあげて飛び起きた。
たぶん今、私の顔はゆでダコである。
「よかった、起きてくれた。おはようございます」
「雨、お、おはよう?ちょ、ちょっっと待って。それ昨日もやめてって言ったよね!?」
「こうでもしないと起きてくれないでしょう?10分は待ったよ?」
私の寝起きの悪さは自分でも理解しているが、それでも思春期の女子に耳元で囁くのはどうかと思う。
けれど口喧嘩では到底かなわない相手なのは分かっているので、大人しくしておくことにした。
「うぐ、、、それはお手数をおかけしました」
「さぁ、起きたら着替える!遅刻しますよ。いいかげん毎日はやめてくださいね」
「は~い、お母さん」
「誰がお母さんですか!!」
雨には部屋から出て行ってもらい、高校の制服に着替える。
(うっふふ~今日は皆で朝食食べられる!嬉しいな。)
いつもは皆忙しいのでなかなか全員は揃わないが、今日は高校の入学式ということもあって全員いる。めったにない日に心を躍らせながら、リビングに向かうのだった。