「そっか。二重人格か…」



薫はどこか切なそうな顔で私を見た。



うぅ。
ちょっと言いすぎたかもしれないけど、事実だし…

と、少しだけ罪悪感を抱いた直後。



「ぶっ。サエちゃんてばドラマの見過ぎじゃーん」


わざとらしくリビングに響いた“カオル”の声。


今の薫は、見た目は完全に男の子。

カオルの声で喋らないでほしい。



「だからっ、ソレ!ソレが二重人格なの」


「なに?どれが?」


今度は“薫”の低い声。

面白がるように畳み掛けてくる。


「アンタ、…わざとやってんでしょ!」

「サエが二重人格とか言うから乗っかっただけ。つーか全裸じゃねぇし。パンツ履いとるわ」



ケラケラと笑う薫はあの頃の可愛い笑顔のまま。

私のスーパーヒーローだったあの頃の。