* ੈ✩‧₊


 カフェを出て、来るときに歩いた道をまた戻った。

「ねえ」

 亜理紗が前方を指差した。

「さっき、あんな看板あった?」
「ええ?」

 よく見れば、シャッターの下りた小さなお店の脇に、木製の立て看板がひっそりと置かれている。

「私いつもそんな注意して歩いてないから自信ないけど、言われてみるとなかったかも……」

 近づいて正面から見てみると、ペンキで『Witchcraft Shop』と書かれている。

「ウィッチ……クラフト……ショップ?」

 亜理紗がスマホで調べてくれた。

「魔女が作ったものを売ってるお店ってことみたい」
「へー、魔女。面白そうだけど、お店閉まってるね」
「違うんじゃない? 看板の矢印はこっちの階段を指してると思う」
「階段?」
 
 本当だ。
 矢印の奥には外階段がある。
 シャッターの閉まったお店の上に行けるらしい。

「行ってみない?」

 そんなの、行くに決まってる。

「だけど、入り口をのぞいて、ヤバそうだったら引き返そうね?」
「わかってる」

 ひとり分しか幅のない錆びた階段を、亜理紗、私の順にカンカン甲高く鳴らしながら上った。